2013年からスタートし、今年で4回目となる「新経済サミット2016」という大規模イベントに来ています。
このイベントは、新経済連盟が主催するもの。
楽天の三木谷社長が代表理事、サイバーエージェントの藤田社長が副代表理事を務めておられる団体です。
新経済連盟(略称:新経連)は、2012年に設立。
団体の目的は、公式サイトによると「eビジネスのみならず様々な新産業も含めた形で対象を拡大し、日本経済の発展により貢献していくこと」とのこと。
2日間にわたるイベントで、プログラムも盛りだくさん!
その中から、初日に行なわれたピッチイベント「NEST STARTUP CHALLENGE」のファイナリスト10社をご紹介します。
豪華な審査員&メンター
14人の審査員と、6人のメンターが付くイベント。
全体の応募社数は分かりませんが、メンターの皆さんは一次審査〜ピッチ前日(つまり昨日)までサポートされていたとのこと。
敬愛する奥田浩美さんと岡島悦子さん、本荘修二さんもメンターの1人。
メンターとして前日までアドバイスされている様子をFacebookで見ていたので、非常に楽しみにしていました。
以下、審査員・メンター一覧(敬称略)です。
- 藤田晋(株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長)
- 吉田浩一郎(株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO)
- アンディ・ルービン(Playground Global 創業者 兼 CEO)
- 茶尾 克仁(DCM 共同創業者 兼 ジェネラルパートナー)
- リンダ・リウカス(Rails Girls 共同設立者)
- ローガン・グリーン(Lyft 共同創業者 兼 CEO)
- ピーター・ベル(Highland Capital Partners パートナー)
- ラジェシュ・サハニ(InnerChef 共同創業者/GSF 創業者)
- スマント・マンダル(March Capital Partners 共同創業者兼マネージング・ディレクター/Clearstone Venture Partners マネージング・ディレクター)
- サエミン・アン(Rakuten Ventures マネージング・パートナー)
- 樋口 景一(株式会社電通 コミュニケーション・プランニング・センター センター長 エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)
- 平野 清久(大和企業投資株式会社 取締役)
- 三神 正樹(株式会社博報堂 常務執行役員/株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 常務執行役員)
- 沼田 洋一(株式会社アサツー ディ・ケイ 執行役員デジタル&データインサイトセンター統括 兼 株式会社アクシバル 代表取締役社長)
【メンター】
- 本荘 修二(本荘事務所 代表)
- 近藤 裕文(株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ 取締役)
- 三浦 義昭(株式会社クレディセゾン ネット事業部長)
- 細野尚孝(株式会社オプトベンチャーズ パートナー)
- 岡島 悦子(株式会社プロノバ 代表取締役社長/グロービス経営大学院 教授/ グロービス・キャピタル・パートナーズ アドバイザー)
- 奥田 浩美(株式会社ウィズグループ 代表取締役)
ファイナリスト10社
登壇した10社について、ピッチだけでは分からなかった部分もあったので、少し調べてみました。
ピッチのメモと併せてご紹介します。
ビザスク / 株式会社ビザスク
トップバッターは、「世界中の知見をつなぐ」というミッションをかかげるビザスク代表の端羽英子さん。
日本最大級のスポットコンサルティングを行なっており、アドバイザーの数は国内外合わせて1万名以上。
スポットコンサルティングとは、「ビジネス領域での「聞きたい」テーマをお持ちの企業や個人が、必要な時に、必要なだけビジネスの相談ができるサービス」です。
同社では、Webマッチングを利用した「ビザスク」と、専任のアカウントマネージャーがつくフルサポート・マッチングの「VQ」を提供。
ビジネスコンサルやBtoBトレーニングは、70億ドルの市場です。
最近は海外展開についてのニーズが多く、140社以上の大企業がクライアントとのこと。
金融系のバックグラウンドをもつ端羽さんが、なぜこのビジネスを始めたのか?というと、23歳でお子さんを産んだのがキッカケだそう。
自分の強みや専門性を探していました。
強みや専門性があれば、様々なライフステージの壁(例えば出産により退職せざるを得ない、等)を乗り越えられるのではないか?と思いました。
ビザスクというプラットフォームを提供することで、みなさんの専門性を探し、活かして欲しいんです(英語プレゼンゆえ、だいぶ意訳です)
TOP | 株式会社ビザスク
ビザスク
Gatebox / 株式会社ウィンクル
2番めは、10社の中で最も笑いが巻き起こった「Gatebox」を開発している武地実さん。
Gateboxは「好きなキャラクターと一緒に暮らせる世界初のホログラムコミュニケーションロボット」とのこと。
おそらくピンとこないと思うので、動画をご覧ください。
プレゼンは「世の中には多くのロボットが存在していますが、このロボットたちを愛せますか?僕は愛せません!」というハイテンションな言葉からスタート。
これまでのロボットは機械的で、愛せる存在ではない、と武地さん。
仕事から帰ってきても、迎えてくれる人は誰もいない。癒やされたい!という思いと、自分の好きなヒーローやヒロインが「次元を超えて逢いにくる」という世界を夢見て開発されたのがGateboxだそう。
第一弾として「逢妻ひかり」を発表したところ、世界中から熱狂的なコメントが集まりました。
「俺の金を全て差し出すよ!」「イケメンキャラも欲しい!」「ありがとう日本!」「さらば現実!」
キャラクターデザイン・監修は「ときめきメモリアル」や「ラブプラス」を代表作にもつ箕星太朗さん。
同社のミッションは、「一人でがむしゃらに頑張っている人を癒やしたい」。リアルとデジタルが混じり合う世界がもうすぐ現実になるんですね。
Gatebox | Hologram Communication Robot
箕星 太朗 …
CrossHelmet / 株式会社ボーダレス
3番手は「CrossHelmet」を企画・開発するボーダレス代表の大野新さん。
IoTのビジネスは、今後5年間で1.7兆ドル市場に成長する見込み。
もともとメーカーで自動車やバイク等のプロダクトデザイナーとして活躍していた大野さんは、未来の交通輸送について考え、CrossHelmetを企画。
交通事故で死亡する人は全世界で約130万人/年。
うち約半数が二輪車(バイク等)による事故で、死因の半分が「頭部への損傷」です。
一方、バイクのヘルメットの機能やデザインは50年間変わっていません。
一般的なヘルメットの弱点は2つ。
- 視野が狭い(死角がある)
- ノイズにより集中力が切れる
ノイズは「赤ちゃんが耳元で泣き叫んでいるくらい」のレベルだそう。
確かに集中力を保つのは難しそうです。
この2つの弱点を克服するのが「CrossHelmet」です。
バックカメラを搭載し、360度見ることができ、「CrossSound Control」という技術を使ってノイズを軽減できる、というもの。
ピッチでは、バイクに乗っている人が実際に聞いている騒音を、CrossSound Controlを使わない場合と使った場合の聴き比べをしました。
おそらくノイズキャンセリングヘッドホンの技術と近いんだと思いますが、かなり軽減されていました。
モバイルアプリとも連動し、ナビゲーションシステムも搭載するそう。
ヘルメットを被った際に見えるイメージ図も紹介されました。視野の上部に小さいモニタのようなものが表示され、現在の走行速度や目的地へのナビゲーション等を確認することができるようです。
Cross Helmet | New Riding Experiences
OZON™ / 株式会社16Lab
4番めは、指輪型のコントロールデバイス「OZON(オズオン)」を開発している木島晃さん。
3次元ジェスチャーコントロールに対応して、OZONをはめた指を上下左右に振るだけでなく、カギを開け閉めするように手を回したり、側面をなぞったりする動きも検知できるそう。
ピッチ内でデモも見せてくださったんですが、こういうデバイスにありがちなレスポンスの遅さも無く、ほぼリアルタイムに操作できるようです。
予め用意されている機能は4つ。
- 家電製品のリモコン機能
- バイブレーションによるメールやメッセンジャーの通知機能
- 物理的なカギ(家の玄関など)、PCやスマホ等のパスワードの置き換えとなる認証機能
- 決済機能
そもそも様々な製品やサービスとの連携を想定しているとのことで、既にトヨタとヤマハの2社がパートナーとして決まっているそうです。
サイトを探したんですが、Facebookページにリダイレクトされてしまいました。
登山・アウトドアの新定番、YAMAP / 株式会社セフリ
5番めは「Socal GPS Trekking Companion」と銘打った「YMAP」を開発している春山慶彦さん
春山さん曰く「スマホの最大の可能性は、通信機器にGPSが付いていること」だそう。
YAMAPアプリを使えば、携帯電波の届かない山奥でも、GPSを使って現在位置を確認できる、というのが最大の特徴です。
他にも、地図データをダウンロードして紙に印刷できたり、YAMAPのコミュニティ(WEBサイト)で写真やコメントを共有したり、ルートや距離、写真などを簡単に「旅アルバム」的に記録できるといった機能があるそう。
アウトドアと接点のない人はピンとこないかもしれませんが、アメリカのアウトドア人口は日本の10倍くらい(日本と韓国はさほど多くないようです)。
伸びしろは充分にあるといえます。
Payming / ドレミングアジア株式会社
6番めは、銀行口座を持っていなくても買物ができる決済サービス「Payming」を提供する桑原広充さん。
「貧困格差を減らすのが目的」という桑原さん。
貧困層の多くが、金融サービスの基礎となる銀行口座を持っていません。
我々は、貧困層に特化した金融サービスを作っています。
今年のG7の最大のテーマは「経済対策」と言われています。
日本にいるとピンときませんが、銀行口座を持っている人は、世界人口の約20%なんだそう。
クレジットカード決済は銀行口座を持っていることが前提なので、世界の8割の人は現金がないとショッピングを楽しむことができない、ということ。
Paymingはこの問題を解決するサービスです。
簡単にいうと「銀行口座を持っていなくても、働いた分の給与を担保にして決済できるようにする」というもの。
リアルタイムに給与計算ができ、このサービスを利用した場合は、毎月もらえる給与からショッピングで使った分を差し引いた給与を支給します(給与日に会社の銀行口座から従業員全員分の代金を引き落とす仕組み)。
会社の銀行口座を介するので、そこで働く個人が口座を持っていなくてもOKということ。
世界のクレジットカード市場はVISAとMASTERが2強ですが、Paymingはその2社がとっていない市場、主に途上国に向けて展開していくそうです。
ドレミングアジア| 貧困と格差を減らすシステムを開発します
銀行口座を持っていなくても買物ができる決済サービス 生活の質を向上させるアプリケーション …
ALLSTOCKER / SORABITO株式会社
7番めは、建設機械や重機のマーケットプレイス「ALLSTOCKER」を運営する青木隆幸さん。
道路や農地を作るために、私たちは建設機械や重機を使いますし、無くてはならないモノです。
けれど、これらの機械を購入する方法は、未だに対面のオークションなのだそう。
海外や地方から旅費と時間を使ってオークションに参加しなければならないのに、購入を検討する時間は落札までの数分間。
コストをかけて来ても、落札できるとは限りません。
出品者側も、機械をオークション会場に運ぶための輸送費がかかります(巨大な機械のため輸送費も高額になる)。
さらに、オークションに参加するのはプロのバイヤーなので、実際に機械を使用する現場に届くのはずっと先になってしまうそうです。
これらの課題を解決するために立ち上げたのが「ALLSTOCKER」です。
売り手と買い手双方からコミッションをもらうビジネスモデルで、すでに170ヶ国のクライアントがいるそう。
ALLSTOCKERで売買される機械は500万円を超えるモノも珍しくありません。
そのため、安全性を担保すべく、メガバンクと連携した決済機能を用意しており、貿易知識なしに世界中と取引ができる国際運送機能ももっています。
バイヤーを介さないため、従来のオークションより早く買い手の元に届くのもメリットの1つ。
AgriBus-NAVI / 株式会社農業情報設計社
8番めは、Androidタブレットを使ったトラクターによる農薬散布のためのソリューション「AgriBus-NAVI」を開発している濱田安之さん。
農業で農薬を散布する際、真っ直ぐ&等間隔かつ隙間なく農薬を散布するのは難しいそうです。
これを解決すべく、約10年前にGPSのガイダンスシステムが登場しました。
ただ、専用端末が高額で、オプションをつけると100万円を超えてしまうため、導入は進んでいなかったとのこと(国内にあるトラクター200万台中、5000台しか搭載していない=0.25%)
AgriBus-NAVIは専用GPSとAndroidタブレットを使って、この問題を解決します。
正式版をリリースしたばかりですが、既にシェアは世界1位。
90%以上が海外からの引き合いで「プアマンズGPSだ」と呼ばれることも。
濱田さんは、農林水産省出身で、当時は研究者としてロボットトラクターの技術に関わっていたそうで、AgriBus-NAVIのベースになっているとのこと。
今後は、オプションとして自動操舵オプションや、複数のトラクターを同時に操作する機能などを追加していくとのこと。
WOVN.io / 株式会社ミニマル・テクノロジーズ
9番めは、1行のコードを挿入するだけでサイトを多言語化できる「MOVN.io」を開発・提供しているジェフ・サンドフォードさん。
2014年6月にリリースして、すでに12万ページ以上を翻訳してきているそう。
実際のデモを見せていただきましたが、操作もとってもカンタンそう。
ユーザは機械翻訳(Google)か人間翻訳(gengo)にするかを選ぶことができ、機械翻訳がヘンなところを修正したい場合は、ダッシュボード(ブラウザ)上で直接直せます。
ネット利用者の数は右肩上がりに増加していますが、そのほとんどが30億人以上いるといわれる英語を喋れない人たちです。
多言語対応したサイトを作るには、コストも時間もかかりますが、WOVN.ioを使えばコストは数分の一(注:無料で15ページまで可)、時間はほんの数分で実現できます。
無料版は15ページまで。
有料版はスタートアップ、ビジネス、エンタープライズという3プランが用意されています。
全ページに入れなくても、例えば海外ニュースを扱っているサイトのプロフィールやAbout(「このサイトについて」的なページ)に入れて「新しいサービスやアプリの情報をお持ちであればご連絡ください。英語もOKです」って載せたら良いかなと思いました。
Travel Pay / 株式会社Liquid
ラストは、次世代の生体認証検索エンジン「Liquid Engine」を開発・提供している久田康弘さん。
昨今、IoTに注目が集まっていますが、彼らが目指しているのは「IoP」。
Pは「Person」のPです。
家のカギもクレジットカードも、”自分自身”で認証するので不要になります。
Liquid Engineは、One to Oneではなく、One to “N”のサービスなんです。
日本語でいうと、「1 対 多」ってことですよね。
Liquid Engineを搭載した「Liquidリーダー(指紋リーダー)」をUSB経由でPOSレジに付ければOKとのこと。
いま注力しているのが「TRAVEL PAY」。
不正利用防止に優れていますし、クレジットカードも不要なので、訪日外国人の方向けの需要にマッチしているから、とのこと。確かに。
優勝したのは「AgriBus-NAVI」
結果は以下のとおり。
- 優勝:AgriBus-NAVI
- 2位:CrossHelmet
- 3位:Gatebox
3位の武地さん、コメントを求められると開口一番「悔しい!!!!」と絶叫(笑)
私も思わず笑ってしまいましたが、それだけ真剣に優勝を狙っていらしたんですよね
Androidの父と呼ばれるアンディ・ルービンさんからも「これが日本の未来だ!」と絶賛されていました。
優勝者の濱田さんの言葉を奥田さんがFacebookに載せていらしたので、最後にご紹介します。
「背中を押してくれる人がいるおかげで思い切って飛べるんだ」ということを今回ほど実感したことはありませんでした。自分も勿論、登壇者全員近い気持ちだろうと思います。
受賞したのは3社ですが、他の登壇者の方々も、シリコンバレーの投資家から声をかけられたり、アライアンスパートナー候補が現れたり、といった場になったそうです。
参加者の6割が、英語のプレゼンは今回が初めてだったとのこと。
メンターの皆さんが前日までサポートした結果が今日だったんですね。
ファイナリストの皆さん、素晴らしいプレゼンをありがとうございました!
■編集後記■
毎年「行きたいな」と思いつつ、平日なので厳しいなーと思っていた新経済サミット。
今年は会社の連続休暇制度を使って参加しました。
今年は意識的に「視座を上げる」「”当たり前”のレベルを上げる」ことを意識したいなと考えているので、そういう意味でも非常に勉強になりました。
明日は2日目の様子をレポートします!