昨日に引き続き、今日も新経済サミット2016へ。
新経済サミット2016 ピッチイベント ファイナリスト10社 #NEST2016 | マナビシェア
2日間で全9セッションありましたが、一番楽しみにしていたセッション8「Tokyo as a New Silicon Valley-東京から世界にイノベーションを-」をレポートします。
パネリストとモデレーターは以下の通りです(敬称略)
- 藤田 晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役社長)
- 伊地知 天(Creww株式会社 Founder & CEO)
- 松本 恭攝(ラクスル株式会社 代表取締役)
- 田中 良和(グリー株式会社 代表取締役会長兼社長)
【モデレーター】大西 康之(ジャーナリスト)
「就職する」とは何か?
パネリスト4人のうち、伊地知さん以外は「新卒で就職した経験」をお持ちです。
学生時代〜新卒時代の、いわば「起業のルーツ」のようなお話を伺うことができました。
藤田さんは「学歴も職歴も、捨てることに躊躇しなかった」とおっしゃいます。
早慶とかじゃなく、普通に青学(=青山学院大学 ※十分上位校です)出身ですし、リスクはあるけど失うものは何もない、と思っていました。
新卒で入社したインテリジェンスは、起業前提での入社でした。
逆に、フジテレビや電通みたいな会社に入っていたら、ずっと残って辞めなかったかも。
当時のインテリジェンスは、まだ社員が80名くらいしかいなかったんです。
自分と10歳くらいしか違わない経営者が、苦しみながら会社を経営しているのを目の当たりにしていたので、起業や経営を身近に感じていました。
他にも、グリーの田中さんはとにかくゲームが大好きで、発売日をいち早く知るために日経新聞を読んでいらしたとか。
「ゲーム雑誌より、日経新聞のほうが情報が速いことに気づいて、熟読してましたね(笑)」
ラクスルの松本さんは、大学生の頃に「0→1(ゼロからイチを創り出すこと)」の面白さに目覚めたそうですし、伊地知さんは15〜16歳で渡米し、複数社を立ち上げた経験をお持ちで、皆さん「いわゆる優等生がやらなさそうなこと」に学生時代から取り組んでいたり、視点がちょっと異なっていたことが分かります。
東京のスタートアップ環境の今
ライブドア事件以降、日本のベンチャー界隈は冷え込んでしまった、と藤田さん。
政府も起業を応援しているけれど、本当に優秀な人は起業しないんだそうです。
本当に優秀な人が起業しない理由は何かっていうと、やはり怖がっているんですよね。
でも、リスクを恐れているのではなく、周囲からバカにされることを怖がっているように見えます。
人材もいて、オフィスやインフラも整っているのにも関わらず、スタートアップはなかなか出てこないといいます。
それを受けて田中さん。
日米のスタートアップ界隈の雰囲気が、そもそも全然違うんですよね。
アメリカに行くと、起業してIPOしたっていうと「スゴいね!」と褒められまくるんです。
日本はそうじゃなくて、上場してお金稼いでるんでしょ、って目で見られる。
日本は「失敗」が全く許されない雰囲気があって。もうちょっと許容しても良いのでは、と感じます。
松本さんから見ると、
「競争環境は海外に比べると全然ヌルいです。資金調達のハードルもさほど高くない」
とのこと。
藤田さんも「起業して上場してEXIT(売却)する、という1本しか道がないのが良くないのでは」と問題提起をされていました。
Skypeを生み出したエストニアの環境
本セッションで語られた東京というか日本の起業環境と、基調講演でエストニア共和国の首相が語った同国のビジネス環境を少し比較してみましょう。
エストニアの人口は京都府と同じくらいですが、国土は東京都の20倍もあります(但し、国土の約50%は森林に覆われているとのこと)。
1991年に経済を再起動させ、順調に発展してきた国です。
スタートアップ企業が多く、Skypeの共同創業者の1人はエストニア出身。
生活の全てにおいてデジタル化が進んでおり、発展のための後押しを政府も積極的に行なっているそう。
幾つかの政策の中で良いな、と感じたのが以下2つ。
- 良いビジネス環境の整備
- 全国共通のデジタルID(通称「E-ID」)の導入
「良いビジネス環境=自由市場である」と考えるエストニアでは、税制度も分かりやすく、OECD諸国の中で最も競争力のある国だと評価されています。
日本では大きな問題になっている公的債務の対GDP比は、10%未満だそう(日本は200%超)。
会社設立は、最短で20分(!)でできてしまうそうです。日本のお役所手続きを考えると、驚異的ですよね。
E-IDではオンライン上で個人認証を行うことができ、契約書や申請書などのデジタル署名が、手描きの署名と同等に扱われます。
そのため、年間の所得申告は、たった3分で済むんだそうです。
他にもオンライン選挙を実施し、全世界から投票を集めるなど、政府主導のもと徹底したデジタル化が進んでいるんですね。
エストニアではカラオケが人気で、相撲スター(把瑠都)を生み出し、日本とも価値観の似ている部分がある、と首相はおっしゃいます。
スタートアップやデジタル化の面では、見習うところがたっくさんありそうです。
■編集後記■
2日間にわたり、普段考えていない「一段上の目線」からの話を伺うことができ、ハッとさせられたり、新しいモノの見方を得ることができました。
世界は広いな、という当たり前のことを実感しましたし、ピッチイベントや各セッションの話を伺って、皆さんが国内ではなくグローバルな目線でビジネスを考えているのをビシバシ感じて、圧倒されました。
参加者によってイベントの受け取り方は異なるのは常ですが、このイベントは特にその差が大きいように思います。
いま、このタイミングで参加させてもらえて本当に良かったです。
登壇者の皆さま、運営スタッフの皆さま(超絶に大変だったと思います……!)、本当にありがとうございました!!