昨年発売されるや否やベストセラーになった『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』
著者のピーター・ティール氏は、Paypal共同創業者の1人で、「ペイパル・ギャング」と呼ばれる起業家・投資家。
※ペイパル・ギャング(or マフィア)とは※
PayPal創業者および創業当初のメンバー。「Tesla」「SpaceX」のイーロン・マスク氏、「LinkedIn」のリード・ホフマン氏、「Yelp」ジェレミー・ストップルマン、「YouTube」チャド・ハーリーとスティーブ・チェン等、そうそうたる起業家のグループを指す。
今日はそんなペイパル・ギャングの”ドン”と呼ばれるピーター・ティール氏が、2012年に母校であるスタンフォード大学で行なった起業に関する授業をまとめた本で『ゼロ・トゥ・ワン』の刊行を記念したトークイベントでした。
世界を新しい視点で見ようとするとき、非常に居心地の悪い思いをする
前半は本に書かれていることのダイジェストのような内容。
起業家精神について説明することは難しい、とティール氏。
科学が2番手から始まる(先行者がいて、その後に続くことが可能)のに対して、起業家は毎回異なります。
もし既に成功している起業家たちのマネをしているなら、本当の意味で彼らから学んでいるとは言えない。
「同じ瞬間が二度とこない」のが「起業」だから。
採用面接でよく質問するのが、
「ほとんど賛成する人がいないが、大切なこととは何か?」
という問いだそう。
コレががまさに「起業のヒント・ネタ」だけど、同時に新しいことを始めるときの課題となります。
なぜなら、世界を新しい視点で見ようとするとき、非常に居心地の悪い思いをするから、とティール氏は言います。
必要なのは「聡明さより勇気」とのこと。
ピーター・ティール氏 × 糸井重里さん対談
今日最も楽しみにしていたのが、糸井さんとの対談!
ティール氏の通訳は、ほぼ日CFOの篠田真貴子さん!カッコいい!
いろいろな掛け合いがあったけど、その中から一部をご紹介します。
本を書いたのはなぜ?
糸井さん:
この本に「誰もが賛成していないことは何か」をずっと問いかけている、と書いてあってショックを受けました。
(この問いを)自分に問いかけているかな?と思って。
まず、なぜこういう啓蒙活動を始めたの?
そんなことしなくてもいいのに。
ティール氏:
多くの人達に「成功するビジネス」を始めて欲しいと思っています。
確かに(現代では)イノベーションも進歩も思ったほどのモノではないけど、もっと大きなことができるはず。
多くの企業に対して、もっとブレイクスルーの技術を試してほしいと思っています。
こうした形(=本)でみんなに伝えることは、とても重要なことだと考えているのです。
本を書こうと思ったキッカケは、人々とのエンゲージメントのため。
脳内で考えるだけでなく文字にすることが大切。
ディスカッション・批判も起こるけれど、それこそが重要。
本は、思考を深めるためのパワフルなツールだと思う。
本に100%同意するのではなく、(書かれたことに対して)自分の意見を持つことで、思考を進めることができる。
失敗をモチベーションにしない
糸井さん:
「大勢の人は理解しないけど、自分だけが理解できる」というのが大きなテーマだけど、(ティール氏自身が)「大勢の人」側だった時代のことを語って欲しい。
ティール氏:
大勢=間違っているとは思っていない。単に反対するのではなく、大多数が間違えている、と思ったときに背を向ける意味があるります。
成功する秘訣を考えると、大切なのは「自分が得意だと思うこと」×「競争相手がいない」組み合わせ(本書では「独占」と表現されている)。
今思えばたいしたことではないけど、私にも競争にとらわれていた時代がありました。
10~20代の頃に競争に負ける経験をすると、心に大きな傷を負います。
(自分は)最高裁の事務次官になれなかったことが「負けた」経験だけど、そのおかげで「何かに固執しすぎていないか」「それほど落ち込む価値のあることなのか」を再考することができました。
糸井さん:
「負けた」ということが、あなたの原動力になったということ?
ティール氏:
失敗は決して良いことではないと思います。そこから何かを学ぶことはできません。
いろいろな失敗理由を挙げることはできますが、多くのことを学ぶことはできません。
シリコンバレーの人達は「失敗は素晴らしい教訓だ」というけれど、それは違ういます。
失敗から学ぶのではなく、失敗からスタートすること。とらわれずに先に進むことが大切です。そうしないと、モチベーションを維持するのは難しいでしょう。
糸井さん:
(ティール氏は)失敗がモチベーションになったわけではない、ということですね。
ティール氏:
そうですね。実際、失敗から抜け出すためには、考え方を変える必要がありました。
失敗から学ぼうとすると、「次はもっとリスクを取らないようにしよう」と思ってしまうことがあります。
失敗のサイクルにとらわれないことが重要です。
■編集後記■
いやー、自分ができないことを批判するのは好きでは無いんですが、今回の同時通訳は本当に分かりにくかったです。
話のツジツマが全く噛み合っておらず、英語で聴いていた(同時通訳を聴いていなかった)友人が「何かヘンだったよね」というレベル。
うーむ……英語を英語のまま分かるようになりたいぞ!と思ったのでした。。
今回の対談は、ほぼ日で記事になったので、併せてチェックしてみてくださいね!
『ゼロ・トゥ・ワン』対談 賛成する人がいない、大切な真実とはなにか。 ピーター・ティール Peter Thiel × 糸井重里 Shigesato Itoi – ほぼ日刊イトイ新聞