今日は渋谷ヒカリエをはじめ、都内各所で開催されている「Tokyo Work Design Week 2015(以下、TWDW)」のセッションへ。
11/18からスタートしたこのイベントも、今日で6日目。
勤労感謝の日である今日のテーマは「明日をつくる、働き方。ーwork to create tomorrowー」です。
全4セッションあったんですが、どうしても都合がつかず。2部のみの参加でしたが、非常にマナビの多い時間になりました!
2部は「「人と企業」の新しい関係について話そう!」と題して、当ブログでも何度かご紹介している「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日/東京糸井重里事務所)」CFOの篠田真貴子さんと、前職の大先輩である佐藤雄佑さん(現在はリクルートエグゼクティブエージェント)。
モデレーターとして、コヨーテ代表の菊池龍之さんとのパネルでした。
詳細がPeatixに載っていたので転載します。
「人と企業はフラットな信頼関係を築けるのか」。このテーマに対して、ひとつの解を提示したのが、リンクトインの創業者リード・ホフマンらが書いた本『ALLIANCE(アライアンス)―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』です。
アライアンスとは、人と企業が信頼関係を築きながら、仕事に応じて雇用関係を結ぶこと。本著では、コミットメント期間や、卒業生ネットワークという具体的で実践的な手法を紹介しています。しかし、日本においてこの手法を実践していくには難しい部分もあるのが正直なところ。では、日本において“人と企業のよい関係”をつくっていくには、どうすればよいのか。
『ALLIANCE(アライアンス)』を監訳した東京糸井重里事務所 取締役CFOの篠田真貴子さんと、日本版アライアンスの実践企業であるリクルートグループにて人事マネジャーを務めた佐藤雄佑さんを中心に、雇う人、雇われる人、という立場を超えて、会場のみなさんとこのテーマをディスカッションしていきたいと思います。
まずは自己紹介
本論が面白いのでココはサクッと。
まずは篠田さん。
男女雇用機会均等法が施工されて4年目に金融系に就職。その後、留学→マッキンゼーに転職し、「振り返ると、当時の自分の働き方は”傲慢”だった」とおっしゃっていました。
マッキンゼー時代、初めてキャリアで挫折感を味わい、ノバルティスに転職。このとき、2人のお子さんを出産されています。
事業部ごとネスレに買収され転籍。
出産を経たことで、大企業で出世していくことに面白さを感じられないと気づいた篠田さんは葛藤していたそう。その後、縁あってほぼ日に転職し、現在に至ります。
続いて、佐藤雄佑さん。
新卒でマーケティング会社に入社し、3年で退職。マーケティングをやっていると「最後はヒトなんじゃないか」と感じるそうで、ヒトといえばリクルートだ!と転職されます。
リクルート入社時も「すぐに独立するんだけど、それでも良ければ」と宣言したそうですが、いつの間にか12年(笑)
2012年にホールディングス化し、2014年に上場したリクルートの中で、分社統合・ホールディングス体制を作る+リクルートキャリアの組織づくりをされていたそう。
それが一段落し、当時のリクルートでは超珍しいんですが、半年間育休を取得→復帰後、リクルートエグゼクティブエージェントで現在は働いていらっしゃいます。
モデレーターの菊池さんは、株式会社コヨーテという会社の代表でいらっしゃいます。
コヨーテは「雇用」が由来?とのこと。世界中の面白い採用手法を集めて、ブログにアップしているとのこと。
人事向けの勉強会を定期的に開催されていて、篠田さんも雄佑さんも、この勉強会つながりだそう。
これまでの”働き方”と、”働く”についての考え
上記キャリアを踏まえたうえで、まずは「働き方」や「働く」ことについて、それぞれのお考えを話してくださいました。
篠田さんは、仕事が忙しいときは会社の近くにワンルームマンションを借りて寝泊まりしていたくらい、長時間労働をしていたそう(たぶんマッキンゼー〜ノバルティス・ネスレ時代)。
子どもを生むまでは「生産性なんてクソ食らえ!」と思っていました(笑)
子どもを産んで2ヶ月後には「仕事がしたい!」って意欲が出てきたけれど、実際は(子育てで)そうもいかない。そこから生産性命!になりました。
37歳の頃(上のお子さんが2歳くらいの)が一番多忙(というか修羅場)だったそうですが、そんな状況でも仕事を辞めたいと思ったことは一度もなかったとのこと。
でも、グローバル企業は評価が上がる=より大きな(グローバルを含む)ポジションを提示されることにつながります。篠田さんは、そのポジションを提示されても嬉しくなかったそう。
「働きたい気持ちはあるけど、どこを目指せば良いか分からない」という30代を過ごしたと篠田さん。
ほんの偶然、ほぼ日の仕事のオファーがあったとき「これは取りに行くべき仕事だ、と思った」そう。
篠田さん曰く、
これまでの延長戦ではない仕事に就けるチャンスはなかなかない。
(糸井事務所に)貢献できるかどうかは未知数でしたし、半年で尻尾を巻いて辞めちゃうかも……とも思っていました。
転職、というより「留学」的な気持ちで入社したんです。
とのこと。何だかスゴく意外です。
最初の3年は、糸井事務所を知る+自分の持っているノウハウを現場に適合させていくことに費やし、そこで初めて「自分の欲」のような、やりたいことが見えてきた篠田さん。
それを外資系の友人に話しても、篠田さんが感じている面白さが全然伝わらなかったそうです。
これを何とか伝えたい、伝わるようにしたい、と思ってポーター賞に応募。
受賞できなくても、1人でも審査員が共感してくれたらいいな、と思っていたそうですが、結果として2012年度、第12回ポーター賞を受賞したんだからスゴいですよね。
一方、雄佑さんは仕事が大好きすぎて、仕事が100%どころか120%のエネルギーを注いで働いてきたそう。
ココは篠田さんの「長時間労働バンザイ!」とも共通しますよね
好きな言葉は「圧倒」で、労働時間もハンパなかったそうですが、それで良いと思っていた時代と振り返っておられました。
独立を視野にリクルートに転職したものの、希望するより早いタイミングで会社から新しいミッションを与えられてきたため、自分でも意外だそうですが、今まで働いてきたとのことです。
雄佑さんのキャリアの転機は、リーマンショック。
当時は千葉支社長だった雄佑さんは、どんなに頑張っても結果が出ない時代ではあるものの、部下には「とにかく頑張れ!」しか言えなかったそうです。
その後、リクルートエージェント(現 リクルートキャリア)は早期退職を行なうんですが、その際に自分の部下が半分辞めるという状況で、「とにかく頑張れ」「圧倒的」じゃダメなんだ、と痛感したそう。
「もっとメンバーが自走できる組織にしよう」と考えが変化したタイミングで、人事に異動されます。
もう1つの転機は、篠田さんと同じく、子どもができたこと(もちろん雄佑さんが出産したわけじゃないですがw)。
全社屈指の長時間労働だった雄佑さんは、「自分が将来後悔するとしたら、子どもと一緒に過ごせなかったことだ」と感じ、育休を取得。
会社では偉そうにしていても家事は新卒同様w とにかく良い経験だったとおっしゃいます。
半年後に復帰し、自分は今後どういう方向に向いたいのか?どういう働き方をしたいのか?を突き詰めて考えた結果、「経営者と向き合う仕事がしたい」という答えにたどりつき、現在のリクルートエグゼクティブエージェントに異動されました。
ちなみに、現在はMBA取得のため大学院にも通っていて、「仕事と子育てと大学院と三冠王を獲ろうと思っている」とのこと。
それを聞いた篠田さんが「やっぱ、今でも”圧倒的”じゃないですか(笑)」と爆笑w
糸井事務所で働くことの大原則は「じぶんでできるようになること」
続いてのトピックは「”働き方”についてのほぼ日、リクルートでの取り組み」について。
糸井事務所では「じぶんでできるようになること」が大原則。
「それって社会人なら当たり前なのでは?」と思われるかもしれませんが、お話を伺うと全然違いました。
糸井事務所では、裁量労働制を採用しています。時間配分ができずに長時間労働になる人は、高い確率で体調を崩し、会社を休みます。つまり、稼働時間が減る、と。それは自己管理ができていないのでNG、ということです。
一見、甘い(≒カンタンな)言葉に聞こえる「じぶんでできるようになること」は、実は厳しい自己管理が求められている、ということですね。
ちなみに、糸井さんが趣味の釣りに対して「おもつらい」という言葉を使っていたそうで、糸井事務所の「はたらきかた」と通じるモノがあるそうです。
「おもつらい」=「おもしろいんだけど、つらい・・・」という意味だそう。なるほど。
以前の講演でもおっしゃっていましたが、ほぼ日は「内発的動機」をとても大切にする会社です。
今回のお話で特に面白いなーと思ったのが、糸井事務所の人事評価について。
どんな仕事でも、「自分は仕事ができたのかどうか?」は自分で決めるものではなく、周りが決めるものです。
ですが、糸井事務所の人事評価は「自己評価」が重視されます。
「自分の評価は周りが決める」という普遍的な原則を考えると矛盾しているように思えますが、それは「お客様の評価まで知っておくように」ということです。
糸井の言葉でいうと「客席側から見た目玉を持ちなさい」ということになります。
考えてみれば「他人に言われてイヤイヤやっている仕事」が、他者から喜ばれるはずありません。
だからこそ「内発的動機」から仕事をスタートさせるのは、とても大事なんですね。
大企業だと、イヤイヤ(もしくは、内発的動機がなく)仕事をしても、スキルを高めればある程度は評価されます。
でも「糸井事務所には、そういう(=大企業っぽい)仕組みがないので、動機以外に仕事をアウトプットしようがない」とのこと。面白い!
篠田さんの話を受けて、雄佑さんが「おもつらい、はリクルートと似てるかも(笑)」というお話。
リクルートには「WILL・CAN・MUST」という考え方があり、それに基づいて半年に1度、目標管理に関する上長との面談があります。
リクルートの特徴は「WILL(=やりたいこと)」から始めること。それに対して「MUST(=やるべきこと)」はその半年の目標を指します。
自分が今の仕事を通じてどうなりたいか、将来どうなっていきたいか、を上長と一緒に考えます。
そのうえで、自分の強み・弱みは何か?とCANを探っていき、WILLとMUSTをつなげる、という仕組みです。
もう1つ、「CDC(Career Development Cycle)」という仕組みがあります。
コレは「人は場所で育つ」という認識が大前提。
リクルートでは「仕事の報酬は仕事」という文化があります。
仕事で負荷をかけ、そのツラい仕事が終わったら、さらに次のツラい仕事を渡していくことで、どんどん本人のキャパを広げていく、という感じ。
雄佑さん曰く「成長できる環境を計画的に付与しよう、と人事側では考えている」とのこと。
リクルートは50年の歴史を持っていますが、定年まで勤めた人は10人以下。
ほとんどの人が定年前に「卒業」します。
そういう会社だからこそ、どこに行っても通用する人になってほしい、という思いがあるとのこと。
どこにいっても通用する人=「変化対応力」のある人です。
変化対応力を身につけるためにはどうすれば良いのか?というと、変化したことがないと身につかない。だから、CDCという仕組みでポジションを異動させていくんですね。
ワタシも数年前まで雄佑さんと同じ会社に所属していたので、WILL・CAN・MUSTのお話はとても懐かしかったです!
■編集後記■
いかがでしたか?
最前列で拝聴していましたが、リクルートと糸井事務所の働き方に、こんなにも共通点があるとは思っておらず、新鮮な驚きの連続でした。
本文ではご紹介しませんでしたが、篠田さんが「自分がどう社会に貢献していけるのか。それが見つからないまま定年を迎える人も多い」とおっしゃっていたのが印象に残りました。
見つけなければならないわけじゃないし、見つけられない人の何かが欠けているわけでもない。
瞑想しても内省しても見つからない。だって「仕事」だから。仕事は「他者評価」だから。
見つけるためには、他者と出会わなければならない。でも、出会いには「運」もある。だから、出会わないまま定年を迎える人がいても普通。
というお話(口調そのままではありませんが)。
他者と出会っても、自分のできること(=CAN)が少ないと、気づけないこともたくさんあるだろうな、と今日のお話全体とのつながりを感じながら伺いました。
もう1つ印象に残ったのが、質疑応答で「WILLを見つけて働こう、と言われても、学生には難しいのでは?」という問いかけに対するお2人の回答が興味深かったので、ご紹介。
雄佑さんは「無くても何か言え」というスタンスだそう。
何も置かないのと、(とりあえずでも)置いたところから始めるのでは、全然違いますよね。
リクルートの人全員が「強烈なWILL」を持っているわけではない、と雄佑さん。
聞く側もすぐに出てくるとは思っておらず、耳障りのいい「綺麗なWILL」が相手から出てきても、「それは本音?」と逆に詰めるそう(笑)
篠田さんは「働いたことのない人(ここでは学生)に、”何が動機で働くのか?”を聞いても無駄!」とキッパリ。
仕事は「他者との関係性」の話。自分も変わるし、周りの人も変わる。動機は常に動的である、というお考えだそう。
雄佑さんも「WILLは変わっていって良い」とのこと。変わるからこそ、リクルートでは半年に1度、WILLを上長とすり合わせる面談を実施しているんですね。
あと、改めてリクルートの「WILL・CAN・MUST」の仕組みって大事だなと。上長との面談という形を取らなくても、自分の棚卸しにも使えるのでオススメです。
篠田さんが監訳された『ALLIANCE』は本当に名著なので、未読の方はぜひ!
終わった後、篠田さんと雄佑さんの前には、名刺交換・話をしたい人たちで長蛇の列が。みなさん熱心に話し込んでおられましたよ!
篠田さん、雄佑さん、菊池さん、スタッフ・参加者の皆さま、ありがとうございました!
(2015/11/30追記)本文で紹介した「おもつらい」について言及している記事リンク、ページは下記です(篠田さん、教えてくださってありがとうございます!)