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スタートアップが成功する秘訣〜新経済サミット2016 オープニングセッション #NEST2016

スタートアップが成功する秘訣〜新経済サミット2016 オープニングセッション #NEST2016

2回にわたってお届けしてきた新経済サミット2016のレポート。
3回目の今回は、初日オープニングセッションの様子をご紹介します。

パネリスト・モデレーターは以下の方々です(敬称略)

【パネリスト】

  • ピーター・ベル(Highland Capital Partners パートナー)
  • 茶尾 克仁(DCM 共同創業者兼ジェネラルパートナー)
  • 福山 太郎(AnyPerk CEO兼共同創業者)
  • スマント・マンダル(March Capital Partners 共同創業者兼マネージング・ディレクター/Clearstone Venture Partners マネージング・ディレクター

【モデレーター】西山 誠慈(ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版編集長)

福山さん以外は投資家ですね。

  • ピーター・ベルさん:
    アーリーステージのテック系企業(ロボティクス、IoT、マーケットプレイス)やコマース系を中心に投資
  • 茶尾さん:
    Uberや中国のコマース系を中心に、日本・中国・アメリカ企業をメインに投資
  • スマント・マンダルさん:
    アーリーステージ系を中心に、16億ドルの運用資産を持つ
目次

1人でスタートアップ→チームで起業する時代へ

まず、日本とアメリカ、中国のスタートアップをめぐる環境について、ピーター・ベルさんは「今、まさに起業に最適な時期」とおっしゃいます。

昨年、アメリカでは550億ドルものスタートアップ企業への投資がありました。すごいことですよね。
一方、今年に入ってからIPO市場が縮小気味になっています。この四半期(1〜3月)は6年ぶりにテック系企業のIPOがありませんでした。

IPO市場が縮小しているなら、起業に最適とはいえないのでは?と疑問に思った方も多いはずです。
実際、アメリカのIPO市場は廃業率も高く、あまり良い状況とはいえません。

アメリカだけでなく、中国や日本のIPO市場もスローダウンしており、2年前と比べるとグローバル的には厳しくなってきた、と茶尾さん。

信頼関係のあるチームは起業の成功率が高い

モバイルやクラウド、AIやドローンなど、様々なチャンスがある中で重要になるのが、「人と人との信頼関係」です。
以下、ピーター・ベルさんの言葉を受け、茶尾さん。

マーケットがスローダウンしているのは良い時期ともいえます。
2年前までは1人の起業家が資金調達に奔走していましたが、今はチームメンバーを集めて投資を募る時期。
投資家にとっては、チームをバックアップする時期なのです。

 

これまでのスタートアップを見ていると、ワンマンよりもチームのほうが起業の成功率は高い。
良いチームメンバーを集められるかどうかが重要ですし、起業家と投資家の信頼関係も大切です。

スマント・マンダルさんも、「確かに、チームが成功のカギを握る」とおっしゃいます。

スタートアップの文化が変化し、プロ化・分業化が進んでいるのが現状。
インドでも役割分担のポートフォリオができてきたとのこと。

日本で起業するうえでの課題

パネリストの中で唯一の起業家である福山さんは、日本のスタートアップの課題について、以下のようにおっしゃいます。

日本人は「一番になりたい」と思って、GoogleやAppleのあるシリコンバレーに行くんですね。
でも、どこで起業するかは、さほど大きな問題ではないんです。

 

一番大切なのは「決意」です。
なぜ会社がつぶれるのか?というと、諦めてしまうから。決意をもって続けようとしないから。
決意をもつことで、起業の成功確率は高くなります。

福山さんは起業当初、あまり英語を話せなかったそうですが「どこでやっても厳しい環境なら、シリコンバレーに行こうと思った」とのことで、シリコンバレーにはメジャーリーグのような夢がある、とのこと。

その結果、5年前にサンフランシスコでAnyperkを創業し、現在は約1000社に対して福利厚生のサービスを提供されています。

シリコンバレーやアジアの現状は?

ピーター・ベルさんは、シリコンバレーの素晴らしさについて「起業が上手くいかなくても、決して失敗者として扱われない」ことを挙げます。

シリコンバレー全体で、「自分に合う会社を探すのは悪くない」「転職をしてキャリアを作っていくのは良いことだ」という文化が浸透しているのが重要なポイントとのこと。

実際にシリコンバレーで起業した福山さんも、日本と比較して以下のように指摘します。

日本のスタートアップは完璧を求めすぎています。
でも、野球を学ぶ時にまずは投げてみるのと同じで、とにかくやってみることが大事。

 

日本人はミスを恐すぎですね。
サンフランシスコでは、世界中から人が集まって、みんなパッションに溢れ、ブロークン・イングリッシュを喋っています。
まずは何をやりたいのか? そして、実際にやってみることが重要なんです。

前2回のレポートでも出てきた「失敗を許容する大切さ」がココでも出てきましたね。
日本とは対極的だな、と感じます。

 

一方、スマント・マンダルさんは「未来への投資は、アメリカよりも日本やアジアへ」といいます。

これまでは欧米向けに作られた製品が多かったけれど、新興国のニーズは全く異なります。
まずはそれを理解しなければなりません。
日本にはたくさんのリソースがあるので、シリコンバレーより日本で起業したほうが良いと思います。

モデレーターの西山さんも、「日本は起業環境が厳しいから、シリコンバレーに行くべきだ!」という信仰のようなものがある、としたうえで、茶屋さんもそれに同意されていました。

「世界がグローバルになってきて、どこに行ってもチャンスがあります。国籍や国は関係ありません」

テック系人材はアメリカだけにいるのではありません。もっと柔軟に、世界の他の地域に目を向けると、東南アジアの市場も成長を続けています。

プロダクトインからマーケットアウトへ

シリコンバレーの企業が日本に進出してきた頃、「日本人はサービスを作ったら、すぐ使ってもらえるものだ」と考えており、ユーザーのニーズをしっかり考えていない、ゲーム感覚なところがあった、と茶尾さん。

しかし、ここ最近は抜本的に意識が変わってきたそうです。

アプリを作ったからといって、すぐに客が付いてくるとは思わないようになりましたね。
しっかり市場調査をし、マーケットニーズに合う商品を提供する企業が増えました。
アプリやサービスを成功させるためには、柔軟性と市場の深い理解が重要です。
ゲーム感覚で「作ったら売れるから」というメンタリティーが大きく変わったように感じます。

ピーター・ベルさんは、パロアルトで大学生向けに、2万ドルとオフィスを提供し、ネットワークを活用、助言を与えて起業をサポートする「Highland Program」を提供しています。

そんな彼から見ても、日本の起業家は変化してきたと感じるそう。
製品だけでなく市場にマッチすることの重要性を、日本企業も徐々に理解し始めてきたと感じています

高度成長期の「良いモノを作れば売れる」という認識が、ようやく変わってきたのだといえるでしょう。

VR、AIなど新しいプラットフォームから次世代のGoogleが現れる

ITのトレンドはどの市場でも似てきた昨今、日本でもグリーやSansanなど発想がグローバルな企業も育ってきました。
茶尾さん曰く「日本より違う国で起業したほうが良いと思わないほうがいい」とのこと。

そのような環境下で、「新しいプラットフォーム」と言われるVRや動画メディア、AI、IoT等についてのディスカッション。

投資家の皆さんは、特にVRとAI、IoTについて多く語っていたのが印象的でした。

実際、新しい成長源を模索するGoogleやSONY、Apple、Facebook等がVRやAIの分野に積極的投資しています。

エンジニアなので新しい技術にワクワクする、と目を輝かせるスマント・マンダルさんも近い将来の展望について以下のように語ります。

VRでは、今後5年で”本物”の製品が出てくるでしょう。
IoTは400億のデバイスとつながる世界がやってきます。

 

生活様式が変化する時代、これらのデバイスを介して10億人がオンラインでつながると、今までのインターネットとのつながりや生活、ライフパターン全てが変わるはずです。

茶尾さんは最近、中国 深センにあるVR機器を精算する工場を見学したそうで「1年以内にVRは爆発的に流行ると思う」と予測します。

その工場では、年内だけで500万台の販売を見込んでいるといい、市場への浸透も加速することが予想されます。

別のセッションでも同じような話題が出ましたが、VRやドローンはBtoB市場のほうが伸びるはず、と茶尾さん。
例えば、不動産屋さんでVRを使ってお客さんに内覧してもらう等、toCよりもニーズがあるとのこと。

IoTについては、データ量が爆発的に増える中で、いかに新しいサービスを作るか?が重要です。
世界のニュースや集められたデータを細かいレベルで分析すると、新しいトレンドが見えてくるはず。
スマホやVR、ドローン、AI、Iot……これらの中から次世代のGoogleが現れるでしょう。

ハードウェアは昔、日本のお家芸ともいえる分野でしたが、直近20年くらいヒット製品が出ていません。
「以前、日本企業はIoTに参入していませんでしたが、今後どのようにビジネスチャンスをつかむのかがポイント」とモデレーターの西山さん。

人生は短い。自分の心に耳を傾けよう

最後にセッションのまとめとして、パネリストそれぞれのコメントをご紹介します。

【ピーター・ベルさん】
起業家は信念を持つことが重要です。
メンタルも含めた準備ができ、決意をもつことができたときが起業のタイミングです。

 

【茶尾さん】
自己分析することが重要です。
自分はサポータータイプなのか、チームを編成する能力があるのか。
みんなが起業家になる必要はありません。起業したら、毎日20時間働かなくちゃならないよ(笑)

 

【スマント・マンダルさん】
誰のアドバイスにも耳を傾けず、自分の心の声にしっかり耳を傾けるようにしてください。

 

【福山さん】
毎年何度も大きなストレスを感じているけれど、他者に幸福を提供する幸せも感じます。
人生は短い。やろう!と思ったなら、踏み出してください。


■編集後記■

失敗を恐れるな」というのは、前回アップしたセッション8でも話題に上がっていました。
年明けから芸能界を賑わせたニュースもそうですが、日本はとことん「失敗」に厳しい国なんだなと感じます

だからこそ、スマント・マンダルさんの「誰のアドバイスにも耳を傾けないで。自分の心の声に耳を傾けてください」というメッセージが響くのではないでしょうか。

スタートアップのメッカといえばシリコンバレー!と思ってしまいがちですが、実際は中国やインドをはじめ様々な国で次世代の有望な企業は育ってきています。
茶尾さんの「世界はシリコンバレーより大きい」という言葉が印象的でした。

 

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