今日はライティングを学び合うコミュニティ「sentence」を運営しているinquireさん主催のイベントに参加してきました。
イベントタイトルは「企業の魅力を伝えるストーリーテリングとライターの役割」。
企業や自治体等の団体のストーリーテリングを目的とした「PR Table」の共同創業者であり編集長の菅原弘暁さんをゲストスピーカーに迎え、同コミュニティを主宰するモリジュンヤさんとのトークセッションもあり、非常に有意義なイベントでした。
後日、logmi(ログミー)にも掲載されるそうですが、参加レポートをご紹介します!
そもそも、「ストーリーテリング」がなぜ重要なのか?
最初のセッションは、ゲストスピーカーの菅原さんによる「PR Table」の紹介とストーリーテリングの重要性についてのお話。
司会&この後のトークセッションのモデレーターは、ライター・編集者の長谷川賢人さん。
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PR Tableのサイトによると、同社のサービスは「PR Tableは、日本全国400社以上(2016年8月時点)の経営者、人事・広報担当者が活用するストーリーテリングサービスです」と定義されています。
昨今WEB業界をはじめ、スタートアップ界隈では「コンテンツマーケティング」や「オウンドメディア」等のキーワードをよく耳にするようになりました。
いわゆる大手企業と比べ知名度が低いため、コンテンツを発信することによって、顧客に知ってもらったり、採用のブランディングに活かしたり、メディアにPRするのが「コンテンツマーケティング」の主な目的といえます。
また、一般的に人の流動が多いといわれるスタートアップ企業において、組織の理念やミッション、ビジョンを社員に浸透させることで、社員のモチベーションを高めたりする狙いもあるでしょう。
コンテンツの目的が様々あるだけでなく、伝える手段もたくさんあります。
その代表格といえるプレスリリースだけでなく、前述のオウンドメディアやFacebook、Instagram等のソーシャルメディア、メディア出演、インタビューを受ける、講演やイベントに登壇する、などなど。
しかし、当然ではありますが、ただ言語化するだけでは「想い」を伝えるには限度があります。
そこで登場するのが「ストーリーテリング」です。
プレスリリースとストーリーの違い
「プレスリリース」は一般的に、メディアに向けてニュース性のある情報を伝えるもの。
一方、「ストーリー」は、 プレスリリースで大々的に発表するほどでもないものの、起業エピソードやプロダクトへの想い、社員(エース、新卒、社長の右腕など)のエピソードのような「ちょっとイイ話」を指すそう。
対象は、メディアだけでなく全ステークホルダー(顧客・従業員・株主などの利害関係者)。
速報性よりアーカイブとして蓄積されていくような性質のコンテンツです。
ステークホルダーとの間に生じる「伝わらない」コミュニケーション課題
ステークホルダー(=株主や経営者、顧客、社員など利害関係者)と呼ばれる人々に対して、企業のストーリーを伝える機会はさほど多くはありません。
例えば、
- 会社のビジョンやミッションが社員に伝わらず、モチベーションが低下
- 会社の文化や雰囲気が伝わらず、採用のミスマッチが発生
- 潜在顧客にしっかりと製品・サービスの本来の良さを伝えきれていない
- 株主に共感されるストーリーを伝えることができるか不安
というようなコミュニケーションロスが考えられます。
PR Tableでは「ストーリーテリング」を通じて、この「伝わらない」課題を解決しているそう。
顧客とのエンゲージメント、採用ブランディング、メディアへのPR、組織の理念やミッション、ビジョンをメンバーに浸透させる。こうした活動を推進していくために、「ストーリー」が持つ役割は大きい。
(イベントページより抜粋)
ストーリーを作成する際に大切な考え方
PRとは、「企業とステークホルダーとの良好な関係構築」を行なうこと。
ストーリーによって双方のコミュニケーション上のミスマッチがなくなり、良好な関係を構築でき、その結果として事業成長につなげることができる。
そう考えると、「ストーリー」の重要性がより理解できますよね。
PR Tableにおけるストーリー作成の考え方はシンプル。
「ステークホルダーに”応援”されるストーリー」であること。
そのために、以下3つの基本原則があるそう。
- 「想い」を実直にシッカリと伝えること
- 企業・団体としての説明責任を果たすこと
- 誰一人として不快な思いにさせないこと
ライターの価値は、相手の想いを「言語化」すること
トークセッションは、編集者の長谷川賢人さんがモデレーターとして進行してくださいました。
以下、セッションの一部をご紹介します。
まずは、ストーリーテリングを身につけるためにどうするか?について。
モリさん
できるだけ物語性(=ストーリー)を伝えることが大事だ、みたいな話は、オウンドメディアのお手伝いをするときや、コミュニケーションに関わる場で語られることが多いですね。
長谷川さん
ライター全員がストーリーテリングできるわけじゃないと思うんですが、どのように発注しているんですか?
菅原さん
PR Tableで依頼するときは、取材の仕方をレクチャーしています。
例えば、起業したキッカケを質問して「小学校の頃に起業したいと思ったんです」って答えが返ってきても、意味が分からないですよね。
「何で?」を4回繰り返すと具体的なエピソードが出てくるんです。そういう具体的な手法をお伝えしています。
モリさん
取材のとき、そこまで丁寧に話してくれるとは限らないんですよ。
出来事だけがポンっと出てくるので、背景やそれが起きた理由、想いや試行錯誤した内容を深掘りしていきます。
物語性のある話をどのくらい引き出せるかがアウトプットの質に影響すると思っているので。
続いて、今回一番面白いなーと思った「コンテンツの耐用年数」と「スロージャーナリズム」について。
モリさん
僕が運営に関わっている「soar」という媒体では、1記事あたり1〜1.5万字ほど。
もちろん1度の取材だけではそんなに長い記事は書けないので、何度か会いに行きます。今までのWEBメディアは「速報性」と記事の本数を求められてきましたが、最近「スロージャーナリズム」というキーワードを見かけるようになりました。
オランダにある「The CORRENSPONDENT(デ・コレスポンデント)」というメディアは、広告収入に頼らず、定期購読料によって運営されており、「時間をかけて良い記事を掘り下げて書こう」というコンセプトを持っています。
書き手を基軸としたオンラインジャーナリズムプラットフォームという位置づけです。面白いですよね。
長谷川さん
スロージャーナリズムの話と関連しますが、コンテンツの「耐用年数」を高めるためには、どうすれば良いとお考えですか?
菅原さん
一過性の出来事ではなく、変わらないことを書くことでしょうか。
起業の原体験を聞くのもそう。過去の経験は変わらないですから。
トークセッションの最後にモリさんのおっしゃっていたことが、非常に印象に残りました。
モリさん
ライターの価値になりやすいのは「言語化」だと思うんです。
当人たちが言語化できていないことをライターが言語化し、その価値を相手に気づかせてあげること。
■編集後記■
いやー、濃いイベントでした!
質疑応答の形式も良かったです。Twitterでモデレーターの長谷川さん宛にメンションを送って、長谷川さんがその中から選んで登壇者の2人に質問していく形でした。
このやり方だと、「質問ある人〜?」→ シーン・・・みたいなことがなくて良いですね。
質問の内容も濃かったです。