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育児+アクションを!「iction! FORUM 2016」参加レポ(後編)

育児+アクションを!「iction! FORUM 2016」参加レポ(後編)

前編に引き続き、「iction! FORUM2016」の参加レポート後編をお届けします。

育児+アクションを!「iction! FORUM 2016」参加レポ(前編) | マナビシェア
前編はコチラ

目次

パネル1:子育てしながら働きやすい社会とは~妊娠・出産・介護でも辞めない仕組みをつくる~

モデレータ:株式会社朝日新聞出版 AERA編集部 編集長 浜田敬子

パネリスト

  • 内閣府 内閣府少子化社会対策大綱を踏まえた結婚・子育て支援の推進に関する検討会 座長代理(民間シンクタンク 勤務) 渥美由喜
  • 横浜市 政策局政策課 担当係長 関口昌幸
  • サイボウズ株式会社 事業支援本部 執行役員 事業支援本部長 中根弓佳
  • 株式会社リクルートスタッフィング 執行役員 営業統括本部副本部長 吉井栄伸
(敬称略) 

まずは1つ目のパネル。
冒頭、モデレータの浜田さんから「行政・民間など、それぞれの立場で、何を課題と感じ、どんなことに注力しているか?」という質問からスタート。

サイボウズ中根さん:
2005年に離職率が28%に達し、社員が辞めない&働きやすい会社への変革を実施しました。
約10年経って、制度やツールは整ってきたので、最近は「自分は一体どういう働き方を選択し、どう生きていきたいのか?」を社員1人ひとりが自分でしっかり考えられるようなマネジメントをする、ということに注力しています。

リクルートスタッフィング吉井さん:
人材派遣の特性上、登録スタッフは女性が多く、自社(=スタッフィング)も女性比率が高いのが現状です。
派遣スタッフの方々が産休・育休を取った後も、リクルートスタッフィングを使って仕事に就きたい、と思ってもらえるような支援に取り組んでいます。
自社の従業員に対しては、出産などのライフイベントによる生活の変化で辞めずに済むよう、労働時間を削減→生産性を上げる取り組みも実施しています。

横浜市 関口さん:
横浜市は、2025年に約100万人の高齢者を抱えることになり、その約6割が後期高齢者になる予測が出ています。
以前から様々な計画を実施してきたものの、直近10年で子育て&介護支援の予算は2000億円以上増えました。
今後さらに増加することが見込まれ、行政だけでは財源が足りません。
今後は、自治体だけでなく、企業や住民の方々と、どのように連携し合ってイノベーションを起こすか?が重要になると考えています。

 

このパネルで一番面白かったのが、「サイボウズはなぜ変われたのか?」という話でした。

上記の浜田さんの問いかけに対する中根さんの答えは明確です。

単に採用力がなかったから。
当時全く名前の知られていなかった会社で優秀な人材を採用しようとすると、ものすごくコストややパワーがかかります。
もちろん、採用後の育成コストも。

 

採用力のないITventureで、膨大なコストをかけて採用・育成しても、辞められてしまっては元も子もない(またコストをかけて採用・育成しなければならない)。
採用より、辞めないようにすることに注力したほうが良いと思ったんです。

時間と働く場所によって、評価をしない」というのはスゴくいいですよね。
でも、実現するのは大変そう。

人事制度の「改革」をするうえで大切にしてきたのは、隠し事はナシ&嘘はつかずに公明正大に、ということ。

当たり前のことのようだけど、徹底するのは相当困難な道程だったはず。
結果、離職率は大幅に低下し、出産後の復帰率は100%というサイボウズ。

もっと詳しく知りたい方は、少し前の記事ですが以下の記事をご覧ください。

パネル2:「両立」から「シェア」へ~家庭での”男性活躍”を応援しよう~

モデレータ:ジャーナリスト 治部れんげ

パネリスト

  • 三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社 代表取締役社長/NPO法人ファザーリング・ジャパン 理事 川島高之
  • 認定NPO法人フローレンス 代表理事 駒崎弘樹
  • グーグル株式会社 マーケティング部 ブランドマーケティングマネージャー Women Will プロジェクト リード 山本裕介
  • 国立大学法人 東京農工大学 リーディング大学院 特任准教授 坂根シルック
(敬称略) 

3つのパネルの中で一番笑ったのが、このセッションでした。

「女性活躍」ってよく耳にしますが、「男性活躍」って耳慣れないですよね。
これは、モデレーターの治部さんの息子さんの造語(?)だそう。

息子さん曰く「女性だけ活躍するなんておかしい!」とのこと。確かに。

 

パネリストの男性3人は、今の日本ではまだまだ珍しい「イクメン」です。
特に興味部下買ったのが、川島さんのお話。

他の2人の男性に比べ、川島さんは少し年代が上&いわゆる「ザ・日本企業」にお勤めです。
実際、男性の育休取得は前例がなかったそうですが、率先して取得。
フレックス制度でも、三井物産グループの中で初めて導入したそう。

川島さんのお話で興味深かったのは以下。

(フレックス制度が)「子育て中の人にだけメリットがある制度」と捉えられると、不平等です。
だから、「誰でも使っていい」ということにしました。
独身者や子どものいない人も、趣味やリフレッシュのために早帰りしています。

 

但し「結果はちゃんと出そう」「結果を出さないと、フレックス制度を止めることなっちゃう」ということを伝えています。
みんなフレックスがなくなるのはイヤだから、どうしたら結果を出せるか?を必死で考えます。結果、業績も上がったし、残業代も減って、経営側のメリットもありました。

日本のマネジメントは、狭義のマネジメントである、と川島さんはおっしゃいます。
いわゆる「単なる行動管理」にしかすぎない、と。

それに対し、フィンランドご出身の坂根さん曰く、「フレームを与えて働いてもらえば良い」とのこと。
彼女によると、「9〜17時まで、この場所で働け」とだけ管理しているのが日本の働き方の特徴だそう。まさに・・・!

但し、単純にフィンランドの真似をすれば解決!というわけではない、と坂根さん。
日本をはじめ、様々な先進国からフィンランドに視察団がくるそうですが、「その国の歴史、社会や文化、価値観の異なる国に、そのまま仕組みだけコピーしてもダメ」とのこと。

その一例として、フィンランドは日本に比べて、人間関係の上下がなくフラットであることを挙げていらっしゃいました。
会社の上司と部下も、単に担っている「役割」が異なるだけ、と。

ちなみに、フィンランドには「恐妻家」という言葉はないそうですよ!(笑)

 

駒崎さんのおっしゃっていたことに深く深く共感したので、このパネルの最後にご紹介。

なかなか子育てや教育に予算投下されないのは、政治家が心のどこかで子育てや教育をナメてるからなんじゃないかな。
自分が当事者だったら、自然と問題意識を持つと思う。
(自分たちの子どもは既に大きい or 自身は奥さんに子育てを任せっきりだったから?)当事者意識がなくてナメてるから、予算を割く優先順位が下げられてしまっているような気がする。

 

女性がいっても「またか」と思われちゃうから、僕たち男性が声を上げていかないといけないなと思うんです。
※()内は私の勝手な補足です。

上記に加え、有権者の平均年齢の高さも、子育てに予算を振り分けない原因になっている気がします。
政治家は当選したいから、有権者(=子育て世代ではない層)に響く政策を立てますよね……。

パネル3:「もう一度働きたい」を実現する~時間制約と不安を乗り越えるには~

モデレータ:株式会社チェンジウェーブ代表 佐々木裕子

パネリスト

  • ヤマト運輸株式会社 人事戦略部長 渡邊一樹
  • 株式会社AsMama 代表取締役社長 甲田恵子
  • NPO法人ママワーク研究所 理事長 田中彩
  • 株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括室 兼 IT戦略室 兼 事業開発室 執行役員 仲川薫
(敬称略)

3つ目のパネルは、当ブログでもお馴染みの佐々木裕子さんがモデレーター!

皆さん、女性の復職を様々に支援しておられますが、印象に残ったのがヤマト運輸の取り組みでした。

「運送業は男性の仕事」と思われがちですが、ヤマト運輸では女性(特に主婦層)の配達員を2万人以上雇用しています。
前半のリクルートワークス研究所 大久保さんの基調講演をご紹介した際にも書きましたが、子育て中の女性は「自宅から徒歩で通える」等、近距離での就業を希望される方が多いのが実情です。

では、なぜヤマト運輸では、たくさんの子育て中の女性を採用できたのか?というと、最大のポイントは「配送センターの数の多さ」でした。

もともと「なるべくお客様の近くに営業所を置きたい」という経営方針があり、その結果、自転車や徒歩で回れる範囲のみの配達範囲となるケースが多く、自動車を使う必要がない&子育て中の女性が働きやすい環境だった、というわけです。

なるほど……渡邊さんのお話を受けて、佐々木さんがおっしゃっていたことが、もしかすると子育て中の女性が働く先のヒントになるかもしれないと感じました。

リモートワーク・在宅勤務にはやはり課題があって、子どもを膝に乗せて働けるのは素晴らしいけど、やっぱり効率が落ちますよね。
自宅から通いやすい(=近距離)かつ自宅ではなく集中できる場所」で働ける上手い仕組みですよね。

 

AsMamaの甲田さんとママワーク研究所の田中さんのお話では「つながり」という共通のキーワードが出されました。

AsMamaは、「安心して子どもを預けられる先がない」けど「知らない人にいきなり預けるのは不安」というニーズに応えるサービス。

地域交流イベント等を開催 → 地域内で「顔見知り」の状態を作る → 安心できる相手と、子どもの送迎など子育てをシェアし合う、という仕組みを作っているそう。

昭和の頃は当たり前にあった「地域で子育てする」ことを実現されているんですね。

 

ママワーク研究所の「ママ・ドラフト会議」はもう少しスパルタかもしれません(笑)

企業からよく聞こえてくるのは「優秀な主婦ならぜひ採用したいけど、そんな人どこにいるの?」という疑心暗鬼な声。
一方ママたちは「育児と無理せず両立して働きたい。でも、そんな都合のいい仕事はないでしょ?」と就活せずに引きこもっている実態。

 

それなら、お互いの出会いの場を創ってしまおうというのが「ママ・ドラフト会議」です。

子育てをしていると、どうしても企業、ひいては社会とのつながりが薄れます。
復職を希望する女性たちの多くは「本当にもう一度働けるのかな……」と不安に思っているはず。

でも、「ママ・ドラフト会議」に出場(?)する過程で、強みの整理や過去の経験などを棚卸しすることで、最終的には企業の採用担当者の前で堂々とプレゼンできるようになるそうです。

これって、「ママ・ドラフト会議」という仕組みを使わなくても、キャリアカウンセラーならサポートできないかなーと思いつつ拝聴していました。
企業の前でプレゼンする準備、採用面接にも活かせそうですよね。

子育て中の女性が働くことで、それまで節約していた教育費やレジャー費が増え、経済効果も生まれます。

日本では、若者の自己肯定感(≒自尊心)が低いといわれ、15歳の子どもの1/3は「誰かに頼る=悪いこと」と思っているそう。

でも、自分の母親がいろいろな人に頼ったり、関わったりしている姿を身近で見ることで、「自分も頼ってもいいんだ」と感じてくれるかもしれません。

田中さんのお話を伺って、確かにそうだなーーと思いました。
女性活用の推進には、本当にさまざまな良い効果があるんですね。

 

「つながり」という意味では、仲川さんが所属されているリクルートジョブズも、求人情報誌を通して

  1. 対企業:子育て中の女性の希望条件に合う求人を開拓する
  2. 対子育て中の女性:どんな仕事なら可能か?ヒアリングしつつ復職の不安を解消する

というサービスを提供していて、企業と求職者を「つなぐ」事業していることになりますよね。

仕事のブランクが長ければ長いほど、復職するための「最初の一歩」を踏み出すのは誰しも不安なはず。
前編でご紹介したリクルートワークス研究所 大久保さんのお話にも出てきた「復職したいけど、仕事を探すために行動できない女性」は、想像以上に多いのでは、と感じました。


■編集後記■

だいぶ長くなってしまいましたが、とにかく盛りだくさんだった今回のイベント。
小安さんをはじめとするiction!プロジェクトの皆さん、運営スタッフの皆さん、本当に本当にお疲れさまでした!

小安さんのおっしゃっていた「iction!プロジェクトのステートメントには、”女性”や”母親”、”ママ”といった単語は使っていません。”働く”と”育児”は、女性だけのものではないから」という言葉が、非常に印象的でした。

ココから1人ひとり、アクションを起こしていきましょう!

 

ジェンダーギャップ指数をはじめ、ダイバーシティに関するイベントレポも書いているので、合わせて読んでみてください。

ハフィントンポスト日本版2周年イベント「未来のつくりかた ダイバーシティの先へ」<前編>

育児+アクションを!「iction! FORUM 2016」参加レポ(後編)

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