今日ご紹介するのは、50万部を超えるヒットとなっている阿川さんの本。
阿川さんといえば、ワタシが真っ先に思い浮かべるのは、「TVタックル」でビートたけしさん&大竹まことさんという強烈にキャラの濃いお2人+多種多様なゲストの方々のお話を、ズバッと仕切っている姿です。
あまりご著書を拝読したことがなかったのですが、本書によると様々な業界・職業の方たち1000人以上と対談やインタビューをされてきたそう。
そんな「聞き名人」の阿川さん。
サブタイトルには「心をひらく35のヒント」とありますが、「コツ」や「秘訣」ではなく、「ヒント」というところがミソ。
エッセイのような文章を、思わず「プッ」と吹き出しながら読んでいくと、ヒントが散りばめられていることに気づきます。
著名人へのインタビューに関するエピソードが中心なので、そのままビジネスに活かせることは少ないかもしれませんが、応用できそうなポイントを幾つかご紹介します。
面白そうに聞く
人間、誰だって自分の話を聞いて欲しいモノ(と思っています)。
ワタシはついつい喋り過ぎてしまうんですが、気持よく話せる時とそうでない時を比較すると、やはり聞き手が面白そうに聞いてくれるか否かがキーになっています。
適度に相槌を打つ・話を促すなども大切ですが、本書で「確かに!」と思ったポイントが2つ。
事前の準備はほどほどに
キャリアカウンセリングの時もそうですが、あまりに準備をしすぎてしまうと、相手の話に対して「ああ、あの話ね、知ってるわ」となってしまいます。
コレって話し手としては、続きを話す意欲が失せてしまいますよね。
本書で阿川さんは、以下のように語っていらっしゃいます。
資料を万全に読み込んで、すべての情報を頭に入れていくと、安心すると同時に、油断もします。これとこれと、これを聞けば完璧だわ、もう大丈夫と、すでに会ってお話を聞いたような錯覚に陥りやすい。
あるいは、既知の情報に引っ張られ、自分自身の発見や素朴な疑問や驚きが、後回しになってしまいがちです。
(P.62)
まさに……カウンセリングでも、例えば、とある企業の早期退職者に連続でお会いするとき、退職理由はだいたい数パターンに集約されます。
よくよく話を伺うと、当然ながら、それぞれ微妙に異なる理由なのですが、ついつい「あー、はいはい」となってしまいがち(いや、単にワタシが未熟なだけなんですけれど)。
安易に「わかる」と言わない
コレもよくやってしまいがち。
相手の気持ちに寄り添おうとするあまり、相手のツラい体験や悩みを打ち明けられたとき、ワタシはついつい「自分の中の同じような経験」を引っ張り出し、「わかるよ……」と言ってしまったりします。
ベテランのインタビュアーである阿川さんですら、未だに肝に銘じていらっしゃるとのこと。
どんなに相手に乗り移ってみたところで、どんなに自分と重ね合わせて感動してみても、「あなたの気持をすべて私は理解できたわ。うん、わかるわかる」ということにはならない。なるわけがないのです。だって自分は同じ経験をしていないのだから。
(中略)
人生において、誰かの「一言」がどれほど大切なものであるかを考えるとき、インタビュアーのほんの小さな相づちも、「きちんと打たなきゃダメだ」と肝に銘じます。
(P.85)
ふぉぉ……確かに話し手の気持ちになってみたら、上っ面で「わかるー」って言われるとムカつきますよね。気をつけよう。。
「◯◯さんらしさ」のワナ
「**さんって意外と◯◯なんだねー」
「そんなことするの、**らしくないよ」
こんな風に友人・知人に言われたことはありませんか?
ワタシはしょっちゅうあります。
(シラフだと意外とマジメなんだね、とか……w)
酔っぱらい話は置いといて、「そんなふうに見られてたのか……」と驚いたり、ショックを受けたりすることもありますよね。
でも、コレって自分でもつい無意識に他人に言ってはいませんか?
「意外性」は重要
恋愛だって、どこかミステリアスな部分を持っているヒトのほうがモテるもの。(え?気のせい?)
キャリアカウンセリングを行なう際、まずファーストコンタクトとしてお客さまに電話をかけるんですが、中には電話の応対がぶっきらぼうというか、とっつきにくい感じの方もいらっしゃいます。
そういうお客さまとの面談は、やっぱり緊張するというか「やりにくいなぁ」と思っていたりするのですが、実際お会いしてみたら、ものすごーーーくステキで話しやすい方だった!なんてことは多々あります。
(もちろん逆の意味で最初の印象を裏切られることもありますが)
阿川さんがステキな比喩をしていらっしゃいました。少し長いですが引用してみます。
人は皆、三百六十度の球体で、それぞれの角度に異なる性格を持っていて、相手によってその都度、向ける角度を調節しているのではないか。
学生時代の友達には北北西の方角を向けるかもしれないけれど、恋人の前では南南西の方角に自分をさらけ出している。
どちらも本人なのだが、相手の目には片方が「その人らしくない」と見えてしまいます。
でも、もし人が、誰を相手にしても三百六十度の自分をすべて見せてしまったら、早晩、飽きられてしまうのでしょう。
いつまで経っても未知の部分があるからこそ、その人に対する興味が尽きることがないのだと思います。
(P.141)
確かに……ワタシは自己開示がスゴいらしいので、もうちょっと秘密主義になろうかな。
ワタシの大好きなヒト達は、「もっと会って話を聞きたい」「もっとアナタのことを知りたい」というヒトばかり。
ワタシもそう思ってもらえるようなヒトになりたいものです。
編集後記
ビジネスパーソン向けの傾聴の本も良いですが、全然違うハタケの方へのインタビューをメインになさっている阿川さんが書かれた本書は、違った角度から「聞く」ことの面白さを認識させてくれました。
秘密主義になるために、口をつぐんで開いての話をじゃんじゃん聞き出せるようになりたいと思います。おお、秘密主義+聞く力が鍛えられて、一石二鳥じゃん!(違