「カリスマ」と呼ばれるリーダーや世界中の人に名前を知られている経営者と言われて思い浮かべる人と言われたら、誰を思い浮かべますか?
本書『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』は、ハワード・シュルツ氏やジム・ロジャーズ氏、柳井正氏、孫正義氏など、世界のトップリーダー3000人以上に会ってきた谷本有香さんの3冊目の著作です。
ビックネームのエピソードは一見「自分には関係なさそう」と思ってしまうかもしれませんが、「成功させようと頑張るけれど、うまくいかない人」全般にオススメです。
だって、トップリーダーたちも、最初は私たちと同じルーキーだったはずですから。
本書のキーワードは「自然体」であること。
「リーダー研究」をライフワークにしている著者が出会ってきた国内外のトップリーダーたちの共通点と、ご自身の経験を元に、その重要性について解説されています。
今回は、特に印象に残った3つのポイントについてご紹介します。
仕事ができて”天然”な人こそ最強
リーダーにはいろんなタイプがいますよね。
従来の「俺についてこい」的なタイプが「太陽」だとしたら、昨今話題になったサーバントリーダーシップは「月」タイプといえるでしょう。
サーバントリーダーシップは、ロバート・グリーンリーフ(1904~1990)が1970年に提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学です。
(NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会より)
本書でも、「太陽」と「月」タイプのリーダーについて触れられていますが(P.93)、それとは別の視点で「仕事ができて天然」というタイプのリーダーについて言及されています。
「天然」というとネガティブな意味に聴こえるかもしれませんが、「仕事ができる」のが前提です。
仕事ができる人はたくさんいますが、立場が人の人からすると「怖い」「厳しい」といったイメージがついてまわりがちです。
「○○さんのジャマをしないようにしよう」と、自分の力を100%発揮できない人も出てくるかもしれません。緊張で力が発揮できないということもあるでしょう。
しかし、「仕事ができて天然」の人は周囲を緊張させません。ホッとさせて、力を発揮しやすい環境を作ります。ちょっとヌケているリーダーのことを助けなきゃ、自分がカバーしなきゃあと思わせてくれます。(P.74)
確かに「話しかけにくい雰囲気」をビンビンに醸し出しているリーダーもいれば、「もー、しょうがないなー」と言われて「ごめんごめん」と言いつつニコニコしているリーダーもいますよね。
どちらが良い・悪いとは言い切れませんが、後者のほうが自然に人が集まってくるような気がします。本書のテーマでもある「自然体」にも通じます。
必ずいい出会いになる「明日死ぬ作戦」
本書の最後の方にも「死を意識する」ことについて、スティーブ・ジョブズ氏の有名なスピーチと共に触れられていますが(P.195〜)、4章で紹介されている「初対面でも一気に緊張感が吹き飛び、自分のパフォーマンスを上げて絶対にいい場にする」方法=「明日死ぬ作戦」は、実際にやってみましたがテキメンに効果がありましたよ!
とはいえ、そんなに難しいことをやる必要はありませんし、もちろん本当に死にそうな目に遭うわけではありません(笑)
自分は明日死んでしまうから、今この人に聞きたいことを全部聞くのだと思い込むのです。もう二度と会えないというイメージは強烈です。
(中略)
普通だったら聞けないようなことも質問できてしまうし、最後は笑って別れたいから何がなんでもいい場にします。
「後でメールすればいいや」「後でフォローすればいいや」という逃げ場を残していると120%のちからを出すことは難しいものです。ついつい遠慮してしまったり、本来の自分のよさを伝えられないまま時間が過ぎてしまいます。
(P.169)
トップ3%のものを見つける
本書では言葉を変えつつ、繰り返し「大きなビジョン」を持つことが重要だと書かれています。
最初は自分の身の回りの欲(=車が欲しい、高級マンションに住みたいなど)を持っていても良いけれど、それをいつか「社会に貢献したい」という想いに昇華させていくイメージです。
- 大欲と小欲(P.12〜)
- 大きなホラを吹くリーダーに人はついていく(P.58〜)
- 私憤と公憤
ミッション、ビジョンを持つことの重要性についても触れられていますが、そもそも「自分のミッションとは何なのか? どのようなビジョンを持てばいいのか?
(P.191)」という方も多いのでは、と著者は言います。
確かに、以前私がキャリアカウンセラーをやっていたときも「やりたいことが分からない」という人にたくさん会ってきました。
本書では、著者がトップリーダーに教わったという「ミッションの見つけ方」について紹介されています。それが「トップ3%のものを見つける」こと。
ただ、トップリーダーたちは「好きだけでは足りない」と言います。「好きなこと、得意なこと、求められること」の3つが一致したときに、ミッションが見つかるのです。
得意は「特異」でもあります。他の人と違う部分、差別化できる部分です。「○○のことなら、誰々さん」と周囲に認識されていることは、自分で得意だという意識がなくても抜きん出ているのです。
そして、好きで得意なことが、人からも求められるのであれば、それは確実にミッションと言えるでしょう。(P.192)
例としてリバネスのCEO 丸幸宏さんとユーグレナの 出雲充社長のエピソードが紹介されています。最初からトップ3%の実力がなくても、「好きという気持ちだけはトップ3%にはいいている」ということでもOKとのこと。
この話はリクルートエージェント時代、頻繁に耳にした「Will・Can・Must」理論にも通じるものがあります。
経営コンサルタントの岡島悦子さんは、著書『抜擢される人の人脈力』の中で、「特異なこと」を「タグ」と表現されています。
私も「自分がトップ3%に入れるくらい好きなことは何だろう?」と考えながら読み、キャリアの棚卸しのキッカケになりました。
「好き」がビジョンやミッションにつながる、というのは何となくイメージがつきやすいのではないでしょうか。
本書には他にも「すぐ実践できること」や「考えるキッカケになること」が盛り沢山。
誰もが知っている企業や国のトップリーダーのエピソードを踏まえ、具体的にイメージできるはずですよ!
■編集後記■
2つ目に紹介した「明日死ぬ作戦」、まさに先日あったインタビュー取材で実践しました。
取材相手は海外から来日中の著者さん。遠慮や緊張して質問しそびれてしまったら、二度とチャンスはありません。
本書を読む前だったので、厳密にいうと「明日死ぬ」と思っていたわけではありませんが(笑)、「今を逃したら二度とチャンスがない」と強烈に思う機会って、普段あまりないですよね。
自分の時間の使い方や仕事の向き合い方を見直す、本当に貴重な機会でした。
著者の谷本さんとはプライベートでも親しくさせていただいていますが、カンファレンス等でモデレーターをされるのを見て、素晴らしいなーと思いつつ、普段のヌケ……もとい、自然体の有香さんもとても素敵です。
今のところ出版記念イベントは無いようですが、開催される際は告知しますね!
- はじめに
- 第1章:働きかけないから人が動く 超一流の仕事力
- 第2章:流れに任せて運と成功を引き寄せるリーダーの法則
- 第3章:一瞬で心を開く超一流リーダーの話し方
- 第4章:一流の人の心をつかむ”谷本流”会話の技術
- 第5章:自分に戻る習慣を持つ
■谷本有香さんの著書
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