「企画ってどうやって思いつくんだろう?」
先日、宣伝会議の「編集・ライター養成講座」修了の報告記事にも記載しましたが、私は「何か面白いことを企画する」ことに苦手意識を持っています。
今回ご紹介する『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』は、ずいぶん前に購入したまま積ん読になっていたもの。
先日読んだ佐藤ねじさんの『超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方』に嶋さんの「一軍ノートと二軍ノート」の話が出てきたので、元になった本を読んでみたいと思ったのと、前述の宣伝会議の講座で嶋さんが講師に来られた回が非常に面白かったこともあって、講座修了後に貪るように読了しました。
本書には「明日からいきなりアイデアザクザク!」な方法は書かれていません。
その代わり、「明日から誰でもやってみることのできる方法」がまとめられています。
150ページ弱の携書(ディスカヴァー21社は新書サイズの本を「携書」と呼びます)なので、サクッと読んで、実践してみてください!
情報は片づけない!整理しない!
本書のテーマは「情報を片づけないこと」です。
「ファイルに入れた瞬間に情報は死んでしまう」というのが嶋さんの考え。
仕事の書類、昔の年賀状、なんでもきれいに分類してしまった後、見返したことはありますか? ファイルに入れたとたん多くの情報は死んでしまうのです。
確かに、ファイリングしたものってなかなか見返す機会がないような気がします。
あと、整理そのものに時間を取られてしまって、情報を「活かす」という観点では本末転倒になってしまうことも……
嶋さん曰く、ファイリングする際のラベルは「自分の既成概念」であるとのこと。
一旦分類してしまうと、例えば「レシピ」はレシピ、「フィギュアスケート」はフィギュアスケートとして整理され、「レシピ×フィギュアスケート」のアイデアが生まれにくくなってしまいます。
嶋さんは、情報を死なせてしまうのではなく、あえて整理しないことで活かす方法を考えます。
データをまとめる手法の1つに「KJ法」というものがあります。
これは、文化人類学者の川喜田二郎氏ががデータをまとめるために考案した手法で、データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめていくやり方。(参考:Wikipedia)
KJ法を参考に嶋さんが辿り着いたのが、本書で紹介されている「情報の集め方」と「情報を放牧させる方法」です。
集める情報は5つ
いよいよ実践!
まずはどんな情報を集めるか?について。
人によって異なると思いますが、嶋さんは以下5つの情報を主にメモしているそう。
- ファクト(事実)
- オピニオン(意見や主張)
- アナリシス(分析)
- 示唆
- 表現
なるほど!と思ったのが4つ目の「示唆」です。
オピニオンやアナリシスほど定かではないけれども、何か、“示唆”を感じさせる情報。これが四つ目です。
“?”や“〜のかもしれない”など推測を含ませるものが多く、小説やエッセーの中で主人公や著者が疑問に思ったことも意外に重要な情報になるのです。
ポイントは「「この情報はオピニオンなのかアナリシスなのか?」、「五つのうちどれに当たるのか?」「本当に役立つ情報なのか?」「ムダなことをしてるんじゃないか?」など、いちいち頭を悩ませる必要は一切ない」ということだそう。
冒頭でご紹介した「情報を片づけないこと」とイコールですね。
あくまで情報を「活かす」ことが重要なので、とにかく集めること。
そして、情報源(ソース)をきちんと記録しておくことも重要です(いざ活用するとき、元情報に当たる必要も出てくるから)。
一軍ノートと二軍ノート
集めるべき情報をある程度決めたとしても、普段メモを取る習慣のない人はなかなか習慣づけするのが難しいはず。
また、「今日からメモを取るぞ!」と張り切って、ちょっと高価なノートを買ってしまうと、なかなか思い切ってメモを取れなかったりします(しませんか・・・?)。
嶋さんのアドバイスは以下の通り。
日々目にする、耳にする情報、面白かったことなどは、まずは第一ステップとして二軍ノートに記録しておくのです。 そして、その中からこれは面白い、興味深いと思ったものをあとでセレクトし、一軍ノートにデビューさせるのです。
(中略)
無駄かもと思ってもとにかくメモ。後で必要ないと判断したら、一軍に上げなければいいわけですから。
嶋さんは一軍ノートに「モールスキン」を使っているそう。
税込みで2000円以上もするノートにメモするには、何となく躊躇いが生じてしまいそうな気がします。
二軍ノートに何を使っているのかは紹介されていませんでしたが、以下で紹介するプロセスを経た情報だからこそ、丈夫なモールスキン(モレスキン)に書き写すんだろうと感じました。
一軍ノートに昇格させる際のコツは以下の2つ。
- 情報をすぐにモールスキンの一軍手帳に書き写してはいけない
- 「おまけ情報」をつける
1つ目のコツについて。
嶋さんは「読み終わった本や、二軍ノートに書かれた情報は大体一ヶ月寝かせておく」そう。
一ヶ月寝かせた後、付箋を貼った本や、二軍手帳を見てみると、なんで、ここに付箋を貼ったんだろう? とか、なんで、こんなメモをしたんだろう?と、自分で自分のしたことがよくわからないときもあります。 そんなとき、一ヶ月後にもう一度思い出してみる。考えてみる。このプロセスが大事なのです。
確かに、付箋を貼った本を再読すると「何で以前の私はココに付箋を貼ったんだろう?」と思い出せないことがよくあります。
もちろん、考えた結果、一軍ノートに昇格させない「捨てる情報」もあるはずです。
一ヶ月寝かせた上で、それでも重要だ、面白い、と思える情報は、一軍ノートに書き写します。
その際に、GoogleやWikipediaで情報について調べて、一緒に書いておくことで「さらに記憶が強いものになったり、情報自体が楽しいものになったりします」とのこと。
情報を「放牧」し、カオスを楽しむ
集めた情報は「活かす」ことが大事です。
嶋さんの情報収集ステップでは「整理せず、メモしていくこと」がポイントでした。
本書では「『羅列』式手帳術」と呼んでいます。
一見無秩序な目の前の混沌をひとまとめにしていく整理法に、自分の頭と身体を慣らしていくことが大事です。この方法を極めると、幾多の断片的な情報からひとつの本質を導き出せるようになるからです。
(中略)
せっかく努力して集めた情報もそのまま置いておいたら、ただのトリビア。情報と情報を交配させることで、さらなる新概念をつくり出すためには、情報の「接着術」が要求されます。 この「接着術」を鍛えてこそ、手帳に集めた情報を立体的に活用できる
「羅列」式手帳術の効果は以下3つ。
- 雑談力
- プレゼン力
- 企画力
特に3つ目は、まさに私が苦手意識を持っていることの解決策になりそうです!
嶋さんにとって「強い企画」とは、一言で説明できる企画だそう。
そういう企画を生み出すために、無秩序に羅列した情報から「上位概念」をつくる訓練を始めた嶋さん。
ポイントは「この情報とこの情報はくっつかないだろうという思い込みや既成概念を取っ払う気持ちになること」とのこと。
大事なことはカオスを楽しめること。情報がとっちらかった状況は不安定だし、どこに何があるのかすぐわかりませんから、最初は不安だと思います。しかし、そこに新しいクリエイティブな組み合わせを発見する快感はたまらないものがあります。
上位概念をつくる訓練は、メモを活用する以外にも幾つか方法があります。
本書では、電車内の中吊り広告を1つのキーワードでまとめる方法が紹介されていました。
今日からすぐにできるトレーニング法ですが、なかなか難しいですね……いきなり出来るようにはならないので、楽しみながらコツコツ頑張ります。
メモ魔の人はともかく、普通は何か目的がないとメモって続かないですよね。
企画力やアイデアが求められる仕事でなくても、前述の通り「雑談力」も確実に身につくので、本書を読んでぜひ試してみてください!
■編集後記■
本書を読み終えてから、さっそくメモし始めています。
一ヶ月後、一軍ノートに書き写すときが楽しみ!
本書は2007年に出版されていますが、先日『THE21』というビジネス誌で嶋さんがインタビューを受けていて、今も同じ方法でメモを取っているとおっしゃっていました。
一度習慣になれば、ずっと使える情報活用法、興味のある人はぜひ本書を読んでみてください!
はじめに
プロローグ 片づけできない人の味方です
ステップ1 とにかく集める! 情報収集編
ステップ2 寝かせて、並べる 情報の放牧編
ステップ3 予想外の出会いとアイデアの誕生 化学変化編
おわりに 集中力より、散漫力