ほぼ日CFO 篠田真貴子さん講演「愛されるロングセラーを生み出し続ける組織づくり」

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以前から大ファンだった「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する株式会社東京糸井重里事務所のCFO、篠田真貴子さん。

幸運にも先日お目にかかる&お食事をご一緒させていただく機会があったのですが、今日はグロービスで講演をされると聞きつけ、駆けつけました!

3部構成でしたが、篠田さんのキャリアについては、以前登壇されたセミナーのレポートに記載したので、今回は2部を中心にご紹介します。

  1. 生い立ち〜糸井事務所入社まで
  2. 糸井事務所の事業
  3. 【対談】君島教授(グロービス/人材マネジメントやクリティカル・シンキング担当)

糸井事務所の事業

糸井事務所および運営サイトである「ほぼ日刊イトイ新聞」をご存知ない方もいるかもしれないので、一応概要を。

1998年6月6日創刊。売上=30.6億円(2014年3月期)
社員+常勤役員=62名(2015年3月)

気になる売上構成は、「手帳や生活雑貨:書籍:送料=90:5:5」とのこと。
EC業界の方は驚くかもしれませんが、自社のEC割合=65%だそう。

糸井さん曰く「まず銀座通りをつくる。そうしたら、自動販売機を置いても稼げる」

ヒトが集まる「場」を作れば、モノは売れるということですね。

「読み物もコンテンツ」というお話の中で、
花が生けてあるとして、生けたヒトのインタビューがいいのか、生けている姿を見せるのがいいのか、生けた花を見せるのが良いのか、コンテンツの個性次第で変わる」という例えが、非常に分かりやすかったです。

「ほぼ日」の事業は、
1)内的な「動機」が源の無料コンテンツを発信(毎日更新/ニュースを追わず「日常」に題材を求める)

読者と継続的に「動機」をやり取りする

2)オリジナル商品を開発し、「ほぼ日ストア」で販売
という流れだそう。

「動機」のやり取りをし、販売前に予め「ストーリー」が共有されているのは、確かにスゴいですよね。
ストーリー性のある商品を売るECはいくつもありますが、「ストーリーができる過程」も含めて共有することで、確実にファンがつくし、やり取りを継続的に行うことで、商品を作る側と買う側の「ズレ」のようなモノを減らすことができるなーと感じました。

糸井事務所が「価値」を生む仕組み

篠田さんが入社した頃は、社内に「仕組み」がなかったそう。
秩序はあるものの個人負担が大きく、事業規模やスピードを拡大できない、と感じたそう。
篠田さん曰く「信号のないスクランブル交差点みたい」だったとのこと(笑)

篠田さんが入社後にCFOとしてやってきたことは、「社長と乗組員(社員)の負担を軽くし、会社が強みを発揮していけるようにする」こと。
具体的には、以下のようなことだそう。

  • 管理部長として、制度・業務プロセスの整備
  • 経営判断に必要な情報の整備(月次の事業概況、データ分析など)
  • 事業・プロジェクトの成果指標を見つけ、共有
  • 事業モデルや長期的課題を整理(会社の存続・反映に向けた課題提起)

驚くべきことに、篠田さんが入社された当初は「予算」がなかったそうです(!)
糸井さんに「予算を作りましょう」と提案したところ、
「うーん、それはどうかな……」と難色を示され、「予算って何のためにあるの?」「予算っていつ頃から世の中にあるの?」と質問されたそうです。

そもそも「なぜ、ロングセラー商品をいくつも生み出せるのか?」に対する解がない、という根本的な事業課題があったそうです。
な、なんかスゴい戦略があるのかと思ってましたよ、ワタシ。

1.「価値」とは何か?

一般的にありがちなのは、

  • メーカーや店の「都合」を考慮する(安くて便利/至高の○○/こだわりの**)
  • ターゲットセグメント
  • PRは商品ができてから考える
  • 売れてこそ価値

⇒「他者」への打率を上げる大衆操作的

一方、糸井事務所では、

  • ほんとうにほしいもの(欲しがられないものは、作っても在庫にしかならない)
  • 最良のふつう
  • 普遍性を目指す 「室町時代のヒトでも喜ぶか」
  • まず喜ばれることが、価値

「自分」を起点に普遍を目指す。普通の生活者へのリスペクト、信頼。

では、「価値」をどう生み出すか?という点に関して、「ほぼ日」では「クリエイティビティの3つの輪」という仕組みがあります。

「動機」「実行」「集合」という3つ全てが「社会」に対して開いている、という水路のような図です。
詳細は、「ほぼ日」の「unusual」というページに掲載されているので、ご参照ください。

2.糸井事務所が大切にする姿勢とは?

「従業員」ではなく「乗組員」と呼ぶ糸井事務所。会社として大切にする姿勢が幾つかあるそうです。
ココではワタシが特に「いいな」と思った2つをご紹介します。

  • 「動機」を大切にする:面白い、好き(もしくは逆に、違和感がある)
  • ひらく:世の中に対して、同僚に対して、お客さまに対して

他にもイロイロと挙げられていましたが、「ひらがな」で表現されているモノが多く、きっと意識的にそうしてるんだろうなぁと思いましたよ!

3.「価値」を実現するプロセス・組織

ここでは、まさに糸井事務所で行なっている日々の業務について。
「自己裁量」「品質と規律を保つ」など、とっても興味深い内容でした!
1つだけシェアします。

【動機を保つ工夫】
– 雑談推奨・しょっちゅう席替え
– 企画は自然発生(許可を求めると発想が死ぬ)
– チームに予算を課さない

また、クリエイティブに関する話がとても面白かったです。

市場に喜ばれる価値を生むようなクリエイティブは、組織の仕事。

  • 基本はひとりの動機から。
  • クリエイティブは身体知(教えることはできるけど、文章を読んでも上手くならない)
  • 組織は自問自答を助ける環境。
    – 糸井さんは他人を10人くらい自分の中に飼っているから、自問自答できる。
    – 普通の人はそうじゃないから、チームの皆がその役を担う。(

4.組織を支えるメンタルモデル

何を「真」「善」「美」とするか、というお話。
何をヨシとするのか、本当に組織の根幹の部分ですよね。

Is… Is not…
  • ふつうの生活者を信頼しリスペクトする
  • フラットな関係を志向する
  • 内発的動機と「みんなに見られていること」がひとをドライブする
  • 大衆操作的なマーケティング
  • お客さまは神様/バカ
  • ひとは放っておくとずるける。ルール、信賞必罰がひとをドライブする

篠田さん曰く、「特にフラットな志向や、”見られている”ことを力にするのは価値観として大事。それが無いと発想が広がらないこともある」とのこと。

糸井事務所では、上記の「価値観」のほかに「ありたい会社の『人格』」も定義されているそう。

  • やさしく(普通のひとへのリスペクトが根底にある)
  • つよく(ただ優しいだけではダメ。収益力や組織力)
  • おもしろく(優しくて強いだけだと魅力がない。ただの真面目なひと)

一見、「え?何?フツウじゃない?」って思うかもしれませんが、ココまでの内容を読まれた方なら、この3つの素晴らしさが分かるはずです。

定義といえば、講演の最後に篠田さんがおっしゃっていたご自身のミッションが素敵でした。
内容はもちろん、「コレが自分の会社におけるミッションだ」とキッパリ言い切れる社会人がどれくらいいるでしょうか。

言語化の大切さと篠田さんの強さを垣間見ることのできた素晴らしい講演でした。いやー、メモとる手が久しぶりにつりそうでしたw


■編集後記■

いかがでしたか?
もともと「ほぼ日」の大ファンだったので、ほぼ日の「なかみ」を知ることができて、本当に嬉しかったです!

今回の講演でも「ふつう」という言葉が何度も出てきました。
これは「ほぼ日」5周年のときに誕生した「最良のふつう」というコンセプトからきてるのかなーと思います。
「ほぼ日」は17周年とのこと。これからもずーっと続いて欲しいなー!

篠田さん、貴重なお話をありがとうございました!
開始前に気づいてくださって光栄でした〜!