ハフィントンポスト日本版2周年イベント「未来のつくりかた ダイバーシティの先へ」<後編>

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ハフィントンポスト日本版2周年イベント「未来のつくりかた ダイバーシティの先へ」<後編>

前編では、ハフィントン・ポストの2周年記念イベント、1つ目のパネルディスカッション、アジア各国で活躍する女性がぶつかる「ガラスの天井」についてのパネルディスカッションの様子をレポートしました。
後編の今回は、引き続き働き方にフォーカスしつつ、「子育て」についての内容です。

登壇者は、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長、武蔵大学助教授の田中俊之さん、株式会社ChangeWAVEに所属する女性活用ジャーナリストの中野円佳さん、ハフィントンポスト編集者の久世和彦さんの4人。
モデレーターは、経済キャスター/ジャーナリストの谷本有香さん。

冒頭で自己紹介を兼ねてスピーチ。その後、ディスカッションという形でした。

「人口オーナス期」は男女フル活用&短時間で働かなければ勝てない

まずは、小室さんのお話から。

小室さんが経営する株式会社ワーク・ライフバランスの創業は2006年。残業ゼロで増収増益を達成している会社ですが、2014年12月頃から「女性活用」や「ダイバーシティ」についての提言を求められるようになってきたそう。

政府にも話しているという「人口ボーナス期とオーナス期(ハーバード大学 デービッド・ブルーム教授)」について語ってくださいました。

 

人口ボーナス期とは、その国の経済が発展して当たり前の時期を指します。生産年齢人口が多い=若者が多いので人件費も安く、「早く・安く・大量に」モノを作ればOK!という時期。

高齢者が少ないので、社会保障費も少なくて済み、国として稼いだ(儲かったお金はそのまま投資に使える状況。現在の中国やインド、シンガポール等が人口ボーナス期にあたります。

人口オーナス期はボーナス期の逆。
高齢者>若者という時期を指し、社会保障費も増加します。
今の日本がまさにコレ。

でも、実は90年代半ばに人口ボーナス期が終わってた、ってご存知でした?

日本はボーナス期が終わり、オーナス期に入って20年経つのに、いまだにボーナス期の働き方を続けています。
人口ボーナス期は一度終わると二度とくることはありません。
けれど、オーナス期なりの発展の仕方はあって、ボーナス期の「早く・安く・大量に」とは真逆の、短時間で効率的に働くことが求められます。

オーナス期=経済発展した国とも言えるので、親が教育に投資ができ、その子どもは高学歴化します。
その結果、子どもの晩婚化が進む→出産時期が後ろ倒しになる→少子化が起きる、という下向きのスパイラル。まさに日本の現状ですよね。

労働人口が減る→男女フル活用しないと組織として勝てない→時給が上がる→短時間で効率的に働かなければ勝てない、と一見大変だな……と思ってしまいますが、小室さんがおっしゃっていた
高い付加価値を生み出さなければ勝てないビジネスに転換していきます。なので、多様な人がアイデアをぶつけ合って、思いも寄らないイノベーションを起こしていかないと生き抜けないんです
という点は、場合によってはチャンスになるんじゃないかな、と思いましたよ!

男性の働き方を見直す=社会を大きく変える伸びしろ

続いて、大学で「男性学」を研究されている田中さんのお話。

前述の小室さんのお話を受けて、「人口ボーナス期に「男は仕事・女は家庭」という考え方が生まれました。なぜこの考えが定着したのか? なぜ現状(オーナス期の発展方法)に合わせず、旧来にしがみつくのか?」という疑問があり、「女性は性別によって生き方が決まるが、男性も同じだ」と考えたそう。

そのことが研究のテーマであり、モチベーションとなっているそうです。

男性を大量採用していた業界(製造・建築等)が縮小し、男性の平均年収も下がっています。
それなのに、ボーナス期の思想(=正社員として就職・結婚して妻子を養う)が普通だと思っているから、それができない自分を責めてしまう男性が多い。

逆に言うと、そんな男性の働き方を見直すことは、社会を大きく変える可能性を秘めている、とも言えます。

男性の育休取得者はまだまだ少ないけど、その分、伸びしろがあるということですよね。
女性の育休取得を推進することも大切ですが、男性の育休取得率(=1〜2%)を5%、10%と増やしていくことは可能なはずです。

確かに、ワタシの周りに育休を取得している男性はほとんどいないかも……大企業じゃないと実現できないのでは?(1人1人の仕事が全社に与える影響、スタートアップをはじめとする中小企業では大きいので)と思ってしまうんですが、何とかならないんですかね?

短い時間でも正当に生産性を評価される仕組みと、やりがいが得られる働き方を!

最後は、株式会社ChangeWAVEに所属しつつ女性活用ジャーナリストとして活躍されている中野さんのお話。

2014年に上梓された『「育休時代」のジレンマ』の内容をもとに、ご自身の経験を含め「女性活用はなぜ失敗するのか?」について分かりやすく説明してくださいました。

詳しくは本を読んでいただきたいのですが、非常に単純化していうと「出産後に総合職の女性が”二極化”するから」なんです。

「二極化」というのは、

  1. 就活の際、「男性と同等に働きたい」と考えて会社を選ぶ(やりがい重視のハードワーク)→その価値観で結婚する=自分と同等以上にハードワークのパートナーを選びがち→でも、子育てを親に丸投げすることには抵抗がある(もしくは近隣に親が住んでいない)ので、自分たちで子育てもしなくては、という考えを持っている→自分で自分の首を絞めてしまう。
  2. 労働意欲・男性との競争意識を、産後等のタイミングで調整したり、諦める。

という2つのタイプのこと。
総合職の女性は増えたけれど、結局(1)のタイプは家事育児をしつつ時間制約のある働き方をする→責任ある仕事を任せてもらえない……→正当に評価されていないと感じて会社を辞めてしまうケースが多いそう。

(2)のタイプのほうが、結果的には会社に残りやすいんですって。

中野さんのおっしゃる「ゴリゴリ仕事をしてタイプは、子どもが生まれたら短時間でも正当に評価される仕組みと、昇進ではなくとも、やりがいが得られる働き方が必要です」という点には納得です。

働き方を変えるターニングポイントは?

続いて、モデレーターの谷本さんからパネリストの3人に「働き方を変えるターニングポイントは?」という質問。
中野さんのお話をシェアします。

中野さんは、ChangeWAVEに転職する前は新聞記者として5年くらい、昼夜関係なくバリバリ働いてらしたそう。
でも、まず結婚を機に、今まで呼ばれていた取引先等との会食に呼ばれなくなり、「仕事を評価されて呼ばれたのではなく、独身女子だったから……?」と感じたんだそうです。結婚後も、昼夜問わず働いていたにも関わらず。

さらに妊娠すると異動になり、同期の男性から「ラクな部署に異動できてよかったね」と言われたり、一人前ではなく「カテゴリー(既婚女子)」として見られることに違和感を覚えたそう。

このことが働き方を変える=この問題を分析したい、と思うキッカケとのことでした。

どうしたら「子育てしやすい国」になれるのか

小室さんはワーク・ライフバランスの第一人者ですが、何がキッカケだったのか?という谷本さんからの質問。
小室さんの答えに深く共感したのでシェアします。

お話を伺ってビックリしたんですが、小室さんにも「残業大好き!」な時代があったそうです。

定時退社して飲みに行くような上司の下に付いたとき、飲み終わった後の上司が忘れ物を取りに戻ってきたことがあったんです。

 

私は「残業して頑張っている自分」を発見してもらえた!と思ったんですが、その上司に怒られたんです。
翌日から「19時に帰れ」としか言われなくなって、腹をたてました。「こんなに頑張っているのに」って。

職場で残業できないから、外のカフェで仕事をするようになった小室さん。
当時立ち上げていた育休取得者の復職支援プログラムを営業する先を探して、午前中に50件TEL→1件アポが取れるかどうかだったそうですが、外で友人とゴハンを食べに行ったりする中で、その友人が営業先を紹介してくれたことがあったんだそうです。

「ライフのインプットこそ、いろいろな仕事のアウトプットにつながるんだ。それがないから、今まで机上でやっていてもダメだったんだ」と気づいたのが、一番最初のキッカケだったそうです。

 

また、ご自身がお子さんを出産して3週間後(!)に現在の会社を立ち上げたそうですが、時短で働く=他の社員が残業している中、自分だけ早く帰るのは、とても肩身が狭かったとのこと。

こんな気持ちになるんだ……と思いました。
役に立たないんじゃないか、と思うとモチベーションも下がり、仕事の成果も出なくなったんです。

肩身が狭くなると仕事の成果も出ない、2つは連動しているんだ」と気づいたんだそうです。

政府がやるべきこと、女性個人ができること

小室さんのお話の中で、「団塊ジュニア世代は、晩婚・晩産化して出産年齢が遅い=育児期間中に介護も始まる」というのにはゾッとしました。

その世代が日本の労働力を支えているのが現状ですよね。

また、少子高齢化と言われて久しいですが、2.1人以上の出生率をキープしなければ人口は減ります。
団塊ジュニア世代が「あと1人産もう」と思えるようになるか否かで、30〜60年後の人口ピラミッドには大きな差ができる、と小室さん。
でも、その世代の女性が出産できるのは、あと数年がリミットです……

小室さん曰く、「政府がやるべきは、文化や慣習を変えること。そのほうが予算もかかりません」とのこと。

育児と介護、両方を抱える家庭を想像すると、長時間労働はデメリットだけしかありません。

  • 育児:長時間労働→延長保育が必要→自治体に負担がかかる
  • 介護:長時間労働→デイサービスは16:30までが基本→24時間施設を増やす→社会保障費を使い果たす

 

小室さんの話を受けて、中野さんからは女性個人にできる2つのことを挙げていただきました。

  1. さっさと見限る
  2. もっと発信する

1)について、最近は転職も当たり前の時代になってきたので、「さっさと見限って」転職するのも一つ、と中野さん。
優秀な人材が、働く環境の整っていない企業をさっさと見限る→(労働人口も減るし、今後激化しそうな)人材獲得競争で負けるという危機感を企業が持つ→マクロ的に企業が変わっていくのでは、とのこと。なるほど。

2)については、転職せず今の会社で働きながらできることです。
今まで、特に子どものいる女性は、どちらかというと子どものことを職場で積極的に持ち出さないというか、家庭でトラブルがあっても言わずに、「男性と同じように働けることをアピールして来ざるを得なかったと思います」と中野さん。

でも、これからは、「子どもがいるからこそ、自分は生産性高く働けている」等、もっと発信しても良いのでは、とのことでした。
子育て中の人だけでなく、介護をしている人も同様に、いろんなマイノリティの方が発揮できる価値を「発信する」こと=企業側に「ダイバーシティ」とは何かを説明・納得してもらえるキッカケになるのでは、とのこと。

確かに、時短で働く女性のほうが、ダラダラと残業する男性より生産性が高い、というのはよく耳にします。いや、男性だけでなく、時短でない女性も同じかもしれませんね……


■編集後記■

前回のパネルでも感じたことですが、無意識のバイアスが男女問わず、いろんなことを阻害しているような気がしました。

本文では深く触れませんでしたが、田中さんのおっしゃる「男性は家族を養わ”ねばならない”」というのもバイアスの1つですよね。
専業主夫をやりたい、バリバリ働きたくない、という男性がいたって良いわけで。

多様性を認め合う社会を」というのは分かりますが、じゃあ実際にどうやって実現するの?となると、概念的というか何というか、「今日からできるアクション」に落とし込まれていないように感じます。

小室さんは「文化や慣習を変えるほうが予算(お金)もかからない」とおっしゃいますが、そういう「目に見えないモノ」を変えるために、具体的にどうすれば良いのか?となると、

  • 欧州のような残業時間の上限を法律で厳しく定める
  • アメリカ等のように残業代の割増分を増やす
    (アメリカは1.5〜1.75倍くらい。日本は割増分が低い=1.25倍ので、残業を咎められることが少ないように思います)

みたいに法律や政府を巻き込むような大きな話になっちゃいますよね。

トップダウンも当然必要ですが、ボトムアップというか、中野さんがおっしゃっていたような「今日から私たちができるアクション」は何かないのかな……と思いました。何か良いアイデアがあれば、ぜひシェアしてください!

▼前編はこちら▼

ハフィントンポスト日本版2周年イベント「未来のつくりかた ダイバーシティの先へ」<前編>