『HARD THINGS』ベン・ホロウィッツ氏×DeNA南場さん対談:Startup X Talk #2~HARD THINGS 君は苦闘を愛せるか

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『HARD THINGS』ベン・ホロウィッツ氏×DeNA南場さん対談

今日は「STARTUP X」というイベントにDeNAファウンダーの南場智子さんと、特にスタートアップ業界で売れまくっている『HARD THINGS』の著者 ベン・ホロウィッツさんが登壇されるということで参加してきましたよ!

この本はテクノロジー企業のCEOに向けて書いたそうですが、それ以外の人にも受け入れられて驚いたそうです。

南場さんも「CEO向けと思ったけど、そうじゃない人の心を打つ、それは何か一生懸命にモノゴトに向かっている人に対して、共通して訴えかけるメッセージがあるのでは」とおっしゃっていました。

ものすごく面白い対談で、Q&Aもエキサイティング!その一部をご紹介します。

「成功物語」は苦手。成功の方程式なんてない

まずは開口一番「成功物語が苦手。読むのも意味がないと思ってる」と南場さん。会場からは笑いがw

「成功の方程式」通りに行動しても成功するとは限らないし、アドバイスするのも老人っぽくて嫌い、と続けます。
南場さんが『不格好経営』を書いたのは、「失敗の歴史を書きたかった」からだそう。

その理由は「自分は失敗から多くのことを学んだから。私と同じ失敗をしてほしくない、新しい失敗をしてほしかったから」だとおっしゃいます。

それを受けてホロウィッツさんも「成功の方程式を書こうとするヒトは多いけど、そんなものは無い。あるなら誰もが読んで成功しているでしょう」と言います。

マネジメントや経営は、状況次第でダイナミックなもの。自分や周囲のヒトと、その状況・コンテキスト次第。
本当に難しいのはゴールを立てることではなく、失敗したとき。優秀な人を採用するのが難しいのではなく、その人を後に解雇しなければならない時が大変、とのこと。

日本とアメリカのスタートアップの違いとは?

南場さんは、本書を読んで、アメリカと日本のスタートアップのギャップはあまりないのかな?と感じたそうです。
「ベンはアメリカでは特異なケースなの?(ベンのように)プライベートを犠牲にして働くのは特殊?」と質問されていました。

日本と比べて、アメリカは家族が大事だし、家族との時間を堂々と求められるよね。あと、失敗しても再チャレンジできる土壌がある。
本を読むと「死ぬことまで考えた」って書いてあるけど、私にはない。「たかがビジネス。死ぬことはない」と思っていて、日本のベンチャーとどこが違うんだろう?って思った。

 

日本とシリコンバレーのスタートアップを見てきて、ギャップを感じる?(日本のスタートアップが)グローバルになるため、何が必要だと思う?

ホロウィッツさんによると、テクノロジー系の会社ではアメリカも日本も似ているそうです。
グローバルで成功しようと思うなら、やはり一生懸命に仕事するしかない、とのこと。世界共通、普遍的なことなんですね。

その上でホロウィッツさんは「日本のスタートアップを充分に理解しているわけではないけれど」と前置きをした上で、2国の違いについてこう述べます。

テクノロジー企業には「ブレークスルー」が必要です。そのためには、過去のやり方に常に疑問を持たなければなりません。
これが日本では文化的に難しいのではと感じています。伝統を重視しているので。
もちろん伝統を重んじることは価値あることですが、テクノロジービジネスに関していえば逆ですね。

TOYOTA等のように「プロセスに卓越する」ためには、コミュニケーションをとってコンセンサスしなければなりません。
しかしホロウィッツさんは「コンセンサスベースはテクノロジー企業では危険だ」と言います。なぜなら、「ブレークスルーは他人には理解できないところから始まるから」だそう。

これを受けて南場さんが「コンセンサスベースの意思決定がリスキーなのは採用でもそう。誰も×を付けなかったヒトを採用しても、会社の地平は広がらない。×を付けたヒトがいても、誰かが三重丸を付けた、みたいなヒトが入社後に活躍する」と、ホロウィッツさんの話に大賛成!とおっしゃっていました。

平均75点のヒトではなく、1教科だけ300点で後は赤点、みたいなヒトがブレークスルーを起こすキッカケを作るのかな、と感じました。
様々なビジネス書に書かれている「強みを伸ばせ」という話にも通じるかな。

IPOか倒産か? 今まで最も「HARD THINGS」だったこと

続いて、今まで一番大変だったときの思いや、支えになったこと・ヒトについての話。
ホロウィッツさんの「共同創始者が困難に直面したときによく言っていた。経営者には「恐怖」と「うっとりした感覚」しかない。そして寝不足になると、その2つが強化されるんだ、とね(笑)」というエピソードが面白かったです(いや、ご本人たちは全然笑えなかったんでしょうけど・・)

南場さんは、一番最初のサービスローンチ時のトラブルについてのエピソードを「時効だから言えるけど」と話してくださいました。

当時、女性の経営者&ハーバード卒って注目されているとき、開発が終わって明日からテスト!というタイミングで、外注先が一行もコードを書いてなかったことが発覚して。
朝5時まで茫然自失で手が震えていた。

 

業界が近いので喧嘩にならないよう、夫とはビジネスの話をしないようにしてたんだけど、このとき1度だけアドバイスをくれた。
関係者(これから投資しようとしてくれているヒト)に物事を小さく言わず、ありのままに全部話せ。システム詐欺という言葉はやめろ。被害者のようなことを言ってるけど、お前は加害者だ。と言われ、このアドバイスを愚直に実行して危機を脱した。

南場さんは、投資家1人ひとりに電話して、「バラ色の未来はなくなった。もう一度資金を入れる前に考えてください」と伝えたそう。
この電話が人生を救った、と振り返っておられました。

ひどい目=HARD THINGSに遭いながらも起業することに価値を感じる瞬間

ホロウィッツさんは「鋭い質問ですね」と苦笑しつつ、「自分より大きなことを成し遂げられること」と答えてくれました。

チームを、組織を、会社を作って成し遂げたことは、個人でやるより大きなこと。インパクトも大きいので、そこが楽しみといえるのではないでしょうか。
コミュニケーションを取りながら、というのは難しい面もありますが、あるタイミングから魔法のようにうまくいきます。
真の喜びは、1人では達成できなかった何かを達成したときですね。

南場さんも同様に、多くの人へのインパクトが価値を感じる瞬間だそう。それ以上に彼女にとって楽しいのがトライ&エラーのプロセスとのこと。

別にCEOじゃなくても良いので、これをやったらどうかな?あれをやったらどうかな?と試行錯誤するのが好きでたまらない。
VCやエンジェル投資家にならないか?という誘いは多いけど、やっぱり私は「Doer(Doするヒト)」だなって思う。

その他のマナビ

だいぶ長くなってしまったので、上記以外にササッた点をざっくりご紹介します。

アイデアを生み出した次のステップ

ホロウィッツさんは「もちろん、ブレークスルーの発想が必要」と述べた上で、会社を立ち上げる上でのアドバイスをしてくれました。

リーダーなら、人を雇って「この会社に入ろう」と思わせなければなりません。
投資家に「この会社に投資しよう」と思わせなければならない。
大切なのは「どれだけアイデアを良いストーリーにできるか?」。本当に良い会社を作ろうと思うなら、ストーリーをどこまでしっかり伝えられるか?が大切。
ビジョンと幻想の違いについて、ビジョンは他のヒトに共有できたこと。共有できなければ、それはただの幻想です。

会社がスケールする際に気をつけるべきこと

(会社がほど良いスピードで成長を図るには?という質問に対して)南場さん「ちょうど良いとか言えない。可能な限りスケールしたい」と述べたうえで、スケールする際に気をつけなければならないことを共有してくださいました。

起業するヒトは、プロダクトリーダー、サービスリーダー、エンジニアであることも多く、1つのことを極めているタイプ。
組織が大きくなれるかどうかは、その役割から外れて、(自分がやっていた)それを他のヒトがやってくれる組織を作れるかどうか。
私も最初はサイトのボタンの形や何から何まで、全部自分でやらないと気が済まなかった。
ある時から、人に任せることを覚えることが大事。T型=全体をある程度分かっていながら、ある1点を深掘りする、という時間の使い方にシフトした。
「全部分かっていなければ」という意識では、スケールできない。

起業家に向いている人は?

質疑応答もエキサイティングだったんですが、中でも「2人は生き残ったから登壇して語れるわけで、多くの人が本当に頑張って、でも失敗して、そちら(=登壇する)側に立てなかった」という質問?を受けた2人の回答がササッたのでご紹介します。

まずはホロウィッツさん。

起業することに価値がある、とは言えないけど、スリリングですよ、とは言えます(笑)
なぜ会社を立ち上げるのかというと「このアイデアを実現しないと生きていられない」から。そうじゃないなら、やらなくていいんです。
「やらなくちゃ」だけではダメで、大きなビジョンがあって、実現するには会社を始めるしかない!というのであれば起業家になるべきです。
成功法則はないけど、間違いなく言えるのは「諦めれば絶対に失敗する」ということ。

続いて南場さん。

金銭的な成功を狙うなら、(起業家は)あまりオッズの良い仕事じゃないよね、9割は失敗するし。(会場から笑いがw)
成功するとむちゃくちゃデカい。けど、優秀でも、やること全部やっても、失敗することのほうが多い。起業家はハイリスクハイリターン。
でも、間違いなく、このジャーニー(≒プロセス)が楽しい。死ぬほど大変だから、成功した時に死ぬほど嬉しい。
トライ&エラーのプロセスが楽しい人にはたまらない仕事。エンジョイできる人には、絶対に起業してほしい。
でも、金持ちになりたいなら、絶対やめとけ(笑)

ちなみに、この「絶対やめとけ」で講演終了となりましたw


■編集後記■

外はどしゃぶりの雨でしたが、会場の熱気がスゴかったです。質問にも長蛇の列が(マイクスタンドのところに出ていって質問するスタイルでした)

上記ではご紹介しきれませんでしたが、「ベイエリアの海外投資家についてのアドバイスは?」「シリコンバレーはなぜ生まれたのか?」などなど、ものすごくたくさんのマナビをいただきました!

講演後も、南場さんが入口付近で熱心に若手起業家たちの質問に答えていた姿がとっても印象的でしたよ!やっぱステキだなー!